北極星
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稲荷桂司(旭川・公務員)*ささやかな気晴らし
このところのコロナ禍のご時世で、休日もめったに外出することがなくなった。これは家族も同じで、特に子供たちは、せっかくの冬休みがこの調子でさすがに鬱憤(うっぷん)もたまるようだが、さりとて、そうそう遊びに出るわけにいかないのが困りものだ。
そんな中で最近、家族内で、はやっているのがネットのフリーマーケットだ。子供たちが集めているグッズを皆で検索し、気に入ったものが見つかればお小遣いで注文している。ささやかな金額のものを、あれがいいこれもいいと話し合っているのを見るのはほほ笑ましく、届いた品物を並べて眺めたり遊んだりしているのも心和む光景だ。
などと私も人ごとのように見ていたが、つられて自分も検索しているうちに、以前から欲しかった専門書を発見してしまった。かつては定価で1万円もしていた本が、2千円などという値段で出ている。しかもそれが1件や2件ではないのだから困ってしまう。
このお買い得品を前にしてのトキメキは、子供らにも劣らず純粋なつもりだったが、一方でなにやら不純な欲望というか、後ろめたいような気持ちも感じている。この後ろめたさは、もしかしたら、部屋に本を積み上げるばかりで一向に整理をしない私にため息をついている、妻に対してなのかもしれない。
(2021年1月18日掲載)
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