北海道新聞 旭川支社 + ななかまど

北海道新聞 旭川支社 + ななかまど

北極星

道北各界で活躍する皆さんによるエッセーコーナーです。 2020年3月までの記事はこちら


川崎正紀(留萌・飲食業)*変わらぬ故郷への思い

 私の生まれは、留萌管内中部のヒグマ事件で有名な苫前町。そして私の実家は、地元の人でも「そこにまだ人住んでるの?」「夜とか冬とか帰れんの?」というところにあった。

 目の前は海、裏は山。夕日は目の前に沈み、数百メートルごとにしかない街灯で、真っ暗な道でも月夜は海に反射し輝いている。真冬のしばれた朝には、けあらしで海から湯気がたつ。

 今や限界集落を通り越して住む人もいなくなった。

 そんな目の前の海にはコンブが一面に広がり、そのコンブの森の奥にはウニやヒル貝、アワビやナマコ、ホヤなどがたくさんいる。もう誰も住まなくなった故郷だが、海は昔から変わらず、たくさんの動植物が生きている。

 先日、この前浜でナマコの密漁事件があった。

 人の家の前で何してくれてる!ってことも思うが、そこに住まなくなった人間が言うことでもないと考えつつ、海上保安庁や警察の皆さまには本当に感謝している。

 そこに住まなくなっても、やはりそこで育った人間は、その場所を大切に思っており、大事にしていきたいとも思っている。知らない誰かに勝手に荒らされるのは、やはり嫌なものである。

 実家を出て早30年。たまには帰ってみますかね、生まれ育った海に!

 

(2021年9月21日掲載)

 
 

 

※掲載情報は、取材当時のものです。閲覧時点で情報が異なる場合がありますので、予めご了承ください。


GO TOP