北極星
道北各界で活躍する皆さんによるエッセーコーナーです。 2020年3月までの記事はこちら
漢幸雄(士別・劇場館長)*酒は旨し
ありがたいことに酒に強い家系に生まれたおかげで若いころから酒に親しんできた。30歳を過ぎたころからは日本酒。宿六が吞(の)む量はそれほどではないとはいえ、毎晩のことなので結構な金額になる。旨(うま)い酒は高くて晩酌では手が出ない。
当時、行きつけの酒屋のオヤジさんが「なかなかイケるよ」と勧めてくれた銘柄がお手ごろな価格で自分の嗜好(しこう)にぴったり。以来飽きずに吞み続けてきた。
毎年の出来具合が変化するのも楽しみの一つで「今年は当たり年だなぁ」と感じるのも一興だ。ところが今年は主原料の酒米が変わったことで結構な違和感。吞み慣れた銘柄なので舌が納得してくれない。そんな敏感な味覚を持っているとは言えないはずなのに。
しかたがないと、有名銘柄を避けて知らない一升瓶を手に取る。醸造に関するささやかなラベルだけが頼りのゲーム感覚。吞んでみればいずれもそれなりに旨さがある。
お気に入りの銘柄に巡り合うまでは流浪の旅だ。
酒に限らずお気に入りに囲まれた暮らしは豊かなのではないか。最近は「断捨離」が流行だが、私はしたくない。世間に歯向かうつもりはないが、最期まで好きな物に囲まれていたい。他人にはガラクタでも自分にとっては宝物。処分しなくてもいいよな、家人は全否定間違いなし。されど。
(2026年08月03日掲載)
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