北海道新聞 旭川支社 + ななかまど

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北極星

道北各界で活躍する皆さんによるエッセーコーナーです。 2020年3月までの記事はこちら


石黒誠(富良野・写真家)*朝食とダイヤモンドダスト

 2月の朝日は、子どもたちが朝食を食べ始める時刻にテーブルへ差し込んでくる。東側に東大北海道演習林の山があるので、日差しが届くのはやや遅い。

 ただ、その光の差すタイミングが絶妙で、凍れた朝には窓の外を舞うダイヤモンドダストを見物しながら目玉焼きが食べられる。

 ダイヤモンドダストが最も輝いて見えるのは、向かって斜め上から差してくる逆光に照らされ、かつ背景が日陰で暗めなこと。これは肉眼で見るときも、写真を撮るときも同じだ。

 住宅地にあるわが家の場合は、道路をはさんだお隣の壁や玄関がちょうど日陰になり、氷のキラキラを浮き立たせてくれる。写真に撮ると、灯油タンクや換気扇が背景に写り込んで生活感があふれる絵になる。

 ある日、食卓についていた小学生の娘が急に「あっ、ダイヤモンドダストが家の中に入って来てる」と目を丸くした。「何をバカなことを」とあきれながらそちらに目をやると、窓の外を群舞するキラキラは、どう見ても窓のこちら側でもわずかに舞っていた。「まさか窓の隙間から入ってきたのか」と、娘の驚きに同調してしまった私は冷静な思考を失った。

 台所からすっと現れた妻が言った。「ただのダストよ。ダスト」。逆光に照らされて、ほこりもまた美しく輝く朝だった。

 
(2022年4月4日掲載)

 

 

 

※掲載情報は、取材当時のものです。閲覧時点で情報が異なる場合がありますので、予めご了承ください。


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