北海道新聞 旭川支社 + ななかまど

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旭山動物園わくわく日記

全国的な人気を呼ぶ旭川市旭山動物園の話題やイベント、裏話などを紹介します。 旭山動物園ガイドとしてもお楽しみいただけます。 2020年3月までの記事はこちら


動物の出産あれこれ*妊娠期間 飼育員ドキドキ

 昨年末、旭山動物園にホッキョクグマの赤ちゃんが誕生しました。順調に成育し、姿が日々、クマらしくなってきています。旭山がホッキョクグマの繁殖に成功したのは40年ぶりで、現在のスタッフは誰も経験のないことです。

 動物園で働いていると、動物の種類の違いを感じることが多々あり、特に出産は、その違いを感じられる貴重なイベントです。

 例えば哺乳類では、肉食獣と草食獣は出産環境が大きく違います。肉食獣は、その時だけ準備される「産室」でひっそり出産しますが、草食獣は普段暮らしている部屋で出産します。

 トラやヒョウ、ホッキョクグマなど肉食獣の赤ちゃんは、生まれたばかりの頃は目も開いていません。毛もほとんど生えておらず、非常に弱い存在。自力で歩けるようになるまでに1カ月以上かかります。

 逆に草食獣のキリンは、生まれて1時間くらいで立ち上がり、歩き出します。もっとすごいのはカバで、生まれた瞬間に泳ぎ始めます。カバは水中で出産することもあり、旭山の凪子(なぎこ)も寝室のプールで生まれました。水中で生まれた後、水面に顔を出し、すぐに息継ぎをしていました。

 野生の草食獣は常に肉食獣に狙われているので、出産後すぐにその場から移動しなければなりません。出産時は多量の血や胎盤などが排出されるので、これらのにおいが肉食獣を呼び寄せ、とても危険です。肉食獣の方が強いというイメージがありますが、生まれた直後は草食獣の方が強いと言えるかもしれません。

 担当動物が出産を控えていると、ドキドキソワソワします。予定日が近づくと「まだかな、早く生まれないかな」と落ち着きません。妊娠期間はトラやヒョウが約100日、カバが約250日。キリンはなんと約450日です。キリンの飼育係は1年3カ月もドキドキソワソワしています。

 動物の出産や子育てについては、同園のホームページや各会員制交流サイト(SNS)で発信しているので、ぜひチェックしてみてください。(獣医師・キリン担当 佐藤伸高)

 

【写真説明】生後3カ月のホッキョクグマの子。すくすくと成長している
(2022年4月4日掲載)

 

 

 

※掲載情報は、取材当時のものです。閲覧時点で情報が異なる場合がありますので、予めご了承ください。


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