北海道新聞 旭川支社 + ななかまど

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今週の一枚


<三浦綾子 生誕100年>生涯 多様な資料で紹介*記念文学館で特別展始まる*「塩狩峠」口述筆記原稿も*遺書や聖書 初公開


  今年で生誕100年を迎える旭川出身の作家三浦綾子さん(1922~99年)。その生涯をさまざまな角度から紹介する特別企画展「プリズム―ひかりと愛といのちのかがやき」が1日、三浦綾子記念文学館(同市神楽7の8)で始まった。「塩狩峠」「泥流地帯」など上川管内の各地を舞台にした小説ゆかりの展示が並び、初日から多くのファンが訪れた。(小林史明)

 特別展は作家、闘病、女性、信仰、平和―という五つの角度から、三浦さんを立体的に捉えている。

 三浦さんはひどい肩こりや手の痛みがあり、「塩狩峠」(1968年)の執筆から、文章を語り光世さんが原稿用紙に書き留める口述筆記を始めた。作家のコーナーでは、その「塩狩峠」の原稿を展示している。

 キリスト教を信仰した三浦さんの聖書も開いて初公開した。26年(大正15年)の十勝岳噴火による「大正泥流」を題材にした「泥流地帯」の引用部分は赤線が引かれるなど、丹念に読み込んだことがうかがえる。

 展示からは三浦夫妻の暮らしぶりも伝わる。光世さんの弁当に添えた手紙には「あんまり上手じゃないけれど久しぶりの綾子のおべんとうをどうか召し上がってね。心一ぱいのすまなさと感謝で」と書かれている。来客簿や電話応対の記録ノート約40冊も並べており、来訪者の多さなどがうかがえる。

 光世さんにささげた詩や独身時代に書き記した遺言は初公開。北広島市の会社員朝倉俊一さん(51)は「闘病を経た、芯の強い作家の姿を知ることができて良かった」、深川市の調理員服部こずえさん(59)は「物静かな作家だと思っていたが、積極的に外とつながろうとしていたと分かった。作品を読み直したい」と話した。

 同館の難波真実(まさちか)事務局長(49)は「さまざまな角度から三浦綾子を見てもらい、若い世代も作品を読むきっかけになればうれしい」と話す。企画展は来年3月21日まで。入館料は大人700円、学生300円、高校生以下無料。問い合わせは同館(電)0166・69・2626へ。

 

【写真説明】三浦綾子生誕100年を記念した特別企画展で、直筆原稿や聖書などに見入る来館者(諸橋弘平撮影)
(2022年4月2日掲載)

 

 

 

 

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