北海道新聞 旭川支社 + ななかまど

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今週の一枚


JR富良野―新得廃止*大動脈、名作の記憶残し

「北の国から」「鉄道員」*住民、ファン惜別

 【富良野、南富良野、新得】「ありがとう」「さようなら」―。明治から道央と道東を結ぶ幹線を担い、テレビドラマ「北の国から」や映画「鉄道員(ぽっぽや)」の舞台にもなったJR根室線富良野―新得間は3月31日、大勢の地域住民や両作品のファンに見守られ117年に及んだ運行を終えた。東鹿越駅(上川管内南富良野町)を出発した最終列車は定刻より15分遅れの午後9時17分に富良野駅(富良野市)に到着。途中駅を含めホームや沿線では惜別のペンライトが振られ、車両が奏でる最後の汽笛や走行音が響いた。
 

 最終列車には満員の約400人が乗車。乗客によると、富良野駅到着前に車掌が根室線の歴史を紹介し、感謝の言葉をアナウンスすると拍手が起きた。兵庫県伊丹市の主婦小倉沙耶さん(44)は「2015年に滝川から釧路までの『最長列車』に乗ったのが思い出。(最終列車の)車内はみな穏やかで、別れをかみしめているようだった」とラストランの余韻に浸った。

 ドラマ「北の国から」の舞台となった富良野市の布部駅には、別れを惜しむ多くのファンが駆けつけた。廃駅後の駅舎の利活用は未定。千葉県船橋市の宮野豊さん(64)は「列車が発着しなくなっても、山々と布部駅があれば『北の国から』を感じられる」と駅舎の保存を願った。

 故高倉健さん主演の映画「鉄道員」のロケ地となった南富良野町の幾寅駅は周辺を含め撮影時のロケセットが残る。町は廃線後も駅舎を保存する方針で、同町幾寅婦人会の後藤治子会長(74)は「私たちもファンの方々に元気をもらっている。大切に残していきたい」と前を向く。

 富良野―新得間は1981年に石勝線が開通するまで道央と道東を結ぶ主要路線として人や貨物を運び、特急も往来した。仕事先だった釧路市から実家の同管内美瑛町に帰省する際に根室線を利用した同町の会社員の梶由貴さん(55)は「懐かしさが急にこみ上げて(富良野駅に)来た。車窓からの景色がとてもきれいだったことを思い出す」と懐かしんだ。

 東鹿越―新得間は、台風被害を受けた16年に不通になったまま廃線を迎えた。

 南富良野町の佐藤圭子さん(84)は、町民有志で手作りした紙芝居「なつかしの鉄路」を幾寅駅で披露した。同区間の長期運休にも触れ、「復旧できると信じていた」と悔しさをにじませた。

 新得駅では「根室本線の災害復旧と存続を求める会」の会員ら10人が「さようなら根室本線 復活を祈念」などと書かれた横断幕を掲げた。同会はこの日で解散し、4月から「根室本線の復活を考える会」として活動する。(千葉佳奈、和田年正、川上舞)
 

【写真説明】沿線をイメージしたヘッドマークを付けて発車した富良野行き列車=31日午後0時20分、JR東鹿越駅(熊谷洸太撮影)
(2024年04月01日掲載)

 

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