北海道新聞 旭川支社 + ななかまど

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旭山動物園わくわく日記

全国的な人気を呼ぶ旭川市旭山動物園の話題やイベント、裏話などを紹介します。 旭山動物園ガイドとしてもお楽しみいただけます。 2020年3月までの記事はこちら


冬のエゾシカ 極寒生きぬくたくましさ


 雪解けが進み、春の足音が聞こえてきました。冬眠しているエゾヒグマがそろそろ動き出すのか気になるところですが、冬眠をすることもなく北海道の極寒の森をたくましく生きぬく、日本最大の草食動物がいます。それはエゾシカ。冬の北海道の動物といえば、彼らでしょう。

 夏の薄毛から一転、冬は分厚い毛を携えて寒さから身を守り、オスの大きな角は雪景色に映え、いつ見ても立派です。冬の森は食べ物が少ないですが、残った落ち葉やクマザサ、樹皮などのわずかな植物を利用して冬を乗り切ります。

 わたしたち人間が放り出されれば数日と持たないであろう、厳しい北海道の冬の自然の中で、あの大きな体にもかかわらず悠然と生活できるその能力には尊敬の念すら覚えます。

 旭山動物園のエゾシカの森にはオスとメス1頭ずつ計2頭を展示しており、彼らも野生のエゾシカと同様に寝室はありませんが、冬の間もずっと外で元気に過ごしていました。この2頭は交尾も確認しており、写真のようにお互いを毛繕いしたりと穏やかに暮らしています。この約1年で旭山動物園から3頭のエゾシカが引っ越したので、メスが来夏に子を産んで放飼場がにぎやかになることを願っています。

 わたしたちは昔からエゾシカの肉や革、角に至るまで貴重な資源として活用してきており、エゾシカは乱獲などにより絶滅寸前まで追い込まれたこともあります。しかし、最近は野生の個体数が増加し、交通事故や農林業被害、地域の自然環境・生態系への影響などが深刻化しており、毎年大規模な駆除が行われていますが、対策が追いついているとは言えない状況です。

 旭山動物園のロゴマークはエゾシカをモチーフにしており、わたしたちと関わりが深い地元の動物です。旭山動物園にお越しの際は、ぜひ、エゾシカを見て、北海道の自然環境に心を傾けてほしいと思います。(エゾシカの森、こども牧場、教育担当 上江昌弘)
 
【写真説明】穏やかに暮らすエゾシカのペア
(2024年03月11日掲載)

 

※掲載情報は、取材当時のものです。閲覧時点で情報が異なる場合がありますので、予めご了承ください。


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