北海道新聞 旭川支社 + ななかまど

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みんなの放課後

「放課後」とは、勉強や仕事などの本業以外に過ごす時間のこと。 スポーツや文化活動など夢中になれる“何か”に真剣に打ち込んでいるチームや団体の皆さんを、ジャンルや老若男女を問わず紹介していきます。


Vol.61 多彩な技法と美しい彩りに魅せられて…「七宝研究グループ『色彩』」

七宝焼(しっぽうやき)は、金属下地に釉薬(ゆうやく)を載せ、高温で焼成する伝統工芸のひとつ。溶けた釉薬によりガラス様あるいはエナメル様の美しい彩色を施す技法は多岐に渡り、その奥深さに魅せられ「自分でも作ってみたい」と感じる人は多いようです。今回は、そんな七宝焼の教室をのぞいてみました。

 

道新文化センター立ち上げ当初から長年「七宝焼教室」の講師を務めていた渡辺ヤス江さんの教え子・アシスタントであった谷由紀子さん。彼女が5年前に勇退した師の後を継いで開いた教室が「七宝研究グループ『色彩』」です。「渡辺先生から教えていただいた知識、自分自身の試行錯誤から得た知識すべてを皆さんに伝え共有するのがこの教室の目的です。私が主宰しているとはいっても、教えるから上とか下とかいう意識はなく、みんなが平等に七宝焼を愛する仲間、と思っています」と谷さんは話します。

教室は毎週月曜、13時からの昼の部と、17時半からの夜の部があり、1回3時間が基本。
決まったカリキュラムはなく、自由制作の中で基礎を学び、必要に応じて各種技法を修得していくスタイルです。現在、メンバーは17人で、90歳を超える方も元気に通われているそう。「無理をすると続きませんから、それぞれの生活スタイルやペースに合わせて来ていただければ結構です。好きな時に来て、好きなものを作ったり仲間とおしゃべりすることでリフレッシュでき、生活に張りが生まれますよ」。

2つの電気炉があり、ペンダントトップなどの小物から週刊誌サイズまで制作可能。はがき大の板を多数並べてつなげれば、かなり大きな作品も実現できます。そうして作られた作品は、年に一回の「七宝研究グループ『色彩』展」で発表。今年は10月30日(火)〜11月4日(日)、旭川市宮下通11丁目蔵囲夢「デザインギャラリー」で開催されます。


生涯付き合える至上の趣味として

七宝研究グループ「色彩」

主宰 谷 さん

生涯付き合える 至上の趣味として

七宝焼は奥が深く、釉薬の特徴を理解して誤りなく表現できるまでに10年、作品の仕上げを左右する「やすり掛け」の修得にまた10年と、生涯をかけて学ぶことのできる奥深さが魅力です。小さなものなら2時間あれば1〜2個作れますし、手指の訓練にもなるので老後の趣味にはぴったりなんですよ。 わからないことがあれば何でも、何回でも聞いてもらうのが私のモットー。ちゃんと自分で理解して、イメージどおりに作品が完成したときの喜びをぜひ味わってもらいたいですね。


七宝焼きの工程と主な技法

【工 程】

1.素地を決定 素地金属は、主に銅や銀等の板(厚さ0.1〜1.5mm)を使用。
2.炉にスイッチを入れる 炉が十分な熱さになるまでは約1時間を要する。
3.素地洗い 使用する銅板の酸化による黒ずみや汚れを落とすため、希薄な酸(3〜5%の希硫酸)に5分ほど浸ける。 4.裏引き 作品が冷えるときに表面の釉薬が割れないよう、素地の裏面にも釉薬を均等に盛って処理する。
5.表釉の盛付 表面に、釉薬を均等な厚さに塗る。 次に、事前に考えたデザインに従って対応する釉薬を盛る。 釉薬は水や油には溶けず、700〜1,000℃の熱で溶けて、金属素地に密着、発色。
6.焼成 作品を焼成用の金網に載せ、炉内に静かに入れる。 炉内の作品がガラス質に変化したら炉内から作品を取り出し、耐火作業板の上に載せて冷却する。
7.仕上げ 焼成後、作品のふちをヤスリ等で台金具にはまるように仕上げる。

【主な技法】

七宝の技法は釉薬や器胎の種類など材料の違いと、線付けの有無など制作方法の違いにより大別できます。
◆一色盛り七宝 一種類の釉薬だけを使用する、七宝の最も簡単な技法。
◆多色盛り七宝 二種類以上の釉薬を使用する、七宝の基礎となる技法。
◆マーブル七宝 何種類かの釉薬を盛り付け、炉の中で釉薬が溶けた時に棒で表面をかきまぜる技法。
◆フリット七宝 素地板にベースの色を塗り、その上にフリット(粒上の釉薬)を置き焼成する技法。

七宝研究グループ『色彩』

●住所/旭川市6条通13丁目57-32
●電話/0166-25-7592

 

※掲載情報は、取材当時のものです。閲覧時点で情報が異なる場合がありますので、予めご了承ください。


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