北海道新聞 旭川支社 + ななかまど

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北極星

道北各界で活躍する皆さんによるエッセーコーナーです。 2020年3月までの記事はこちら


石黒誠(富良野・写真家)*子どもといる春

 2月中旬、同居している母が内臓を患い入院した。食事の支度や子どもの習い事への送り迎えで母を頼ってきた私たち夫婦は、共働きの互いの仕事量を調整し家事に時間を振り向けた。

 同じタイミングで新型コロナウイルスが流行し始めていた。子どもたちの小学校や習い事が次々と休みになって、3学期にやり残した兄妹の勉強の手伝いと、昼食の準備が増えた。

 私は、これまでやっていた泊まりがけの出張の仕事をごっそり断った。地元の料理の撮影も、客足が途絶えて収益が悪化しているからと、宿泊施設から断りの連絡が入った。稼ぎが少なくなって、じわじわと追い詰められる感覚にとらわれながらも、こんなに子どもたちと一緒に過ごせる春は無かったかも知れないと思う。

 感染するリスクが無いだろうからと、一緒に誰もいない野山へずいぶん出かけた。丘での尻滑り、堅雪のころは空知川の河畔をよく探検した。平均台のようにゆらゆらする倒木、小鳥が猛禽(もうきん)類に食われた痕跡。小さな流れに網をつっこんだら大きなニジマスが入った。雪解けの早い南斜面でギョウジャニンニクを摘んだ。

 生活のピンチは続く。それでもカラスは卵を抱き、ヒバリが空高くさえずっている。

 春は来ているのだ。

(2020年4月20日掲載)

 

※掲載情報は、取材当時のものです。閲覧時点で情報が異なる場合がありますので、予めご了承ください。


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