北極星
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大西博子(旭川・発明学会会員)*魔法の楽器
子供の頃、ピアノを習っている人はほとんどおらず、ましてピアノがある家庭はめったになかった。もちろん、わが家もそうだった。
でもYちゃんの家には黒くピカピカに光ったピアノがあった。お姉さんが音楽の先生だった。私はYちゃんの家に遊びに行くたび、ピアノを触らせてもらえるのが何よりうれしかった。
ピアノは老若男女、弾けない人でも鍵盤をたたくと忖度(そんたく)なく音が出る「魔法の楽器」。あの時のピアノとの出合いが忘れられず、社会人になってから教室に通いだした。レッスンが進むと少しずつ弾けるようになった。自宅での練習は必須で、ピアノなしで続けていくのは難しくなった。
そんな折、中古のピアノを譲り受ける話が持ち上がった。コツコツためたお金で、幼い頃からの夢が現実となる喜び! 父からは「嫁に行く年頃なのに今更ピアノを買うとは」と叱られたが、私は「ピアノの上で食事もするし、手紙も書くし、本も読むし何でもするから大丈夫」と説得。待望のピアノが、わが家の8畳の和室にやって来た。
冬はストーブがなく冷え切った部屋で、オーバーを着、手袋をはき、完全装備で練習した。発表会で先生と「トルコ行進曲」の連弾をしたのは忘れられない。
そのピアノは今、娘や孫たちが音を奏で、私の耳を楽しませてくれている。
(2026年10月26日掲載)
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