北海道新聞 旭川支社 + ななかまど

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北極星

道北各界で活躍する皆さんによるエッセーコーナーです。 2020年3月までの記事はこちら


大西博子(旭川・発明学会会員)*魔法の楽器

 子供の頃、ピアノを習っている人はほとんどおらず、ましてピアノがある家庭はめったになかった。もちろん、わが家もそうだった。

 でもYちゃんの家には黒くピカピカに光ったピアノがあった。お姉さんが音楽の先生だった。私はYちゃんの家に遊びに行くたび、ピアノを触らせてもらえるのが何よりうれしかった。

 ピアノは老若男女、弾けない人でも鍵盤をたたくと忖度(そんたく)なく音が出る「魔法の楽器」。あの時のピアノとの出合いが忘れられず、社会人になってから教室に通いだした。レッスンが進むと少しずつ弾けるようになった。自宅での練習は必須で、ピアノなしで続けていくのは難しくなった。

 そんな折、中古のピアノを譲り受ける話が持ち上がった。コツコツためたお金で、幼い頃からの夢が現実となる喜び! 父からは「嫁に行く年頃なのに今更ピアノを買うとは」と叱られたが、私は「ピアノの上で食事もするし、手紙も書くし、本も読むし何でもするから大丈夫」と説得。待望のピアノが、わが家の8畳の和室にやって来た。

 冬はストーブがなく冷え切った部屋で、オーバーを着、手袋をはき、完全装備で練習した。発表会で先生と「トルコ行進曲」の連弾をしたのは忘れられない。

 そのピアノは今、娘や孫たちが音を奏で、私の耳を楽しませてくれている。

(2026年10月26日掲載)

 

※掲載情報は、取材当時のものです。閲覧時点で情報が異なる場合がありますので、予めご了承ください。


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