北海道新聞 旭川支社 + ななかまど

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どうほく談話室


旭川市豊岡地域包括支援センター長 森英明さん(45)

認知症当事者視点の介護模索*気持ち尊重 可能性引き出す

 旭川市は地域の高齢者介護の軸となる地域包括支援センターを11カ所設けている。そのひとつの豊岡地域包括支援センターでセンター長を務める森英明さん(45)は、認知症の人の視点に基づいた介護を模索している。認知症の特徴やよりよい介護のあり方などについて聞いた。

 

 ―高齢者支援だけでなく、精神障害者支援の経験もありますね。

 「一般企業で5年ほど営業を担当しましたが、『おばあちゃん子』で高齢者と関わることが好きで、福祉の道に進みました。精神障害の領域についても『障害は社会の側にある』という思いが強くありました」

 

 ―認知症の支援のあり方について、新しい取り組みをしています。

 「認知症と診断されると、家族はネガティブに受け止めてしまいます。でも、認知症の人がとる行動には背景があります。それから『こんなことならできる』といったこともある。それを言語化して家族に伝えたいという思いがあり、取り組みを進めています」

 

 ―そのひとつが、本人や家族が参加するワークショップ「認知症世界の歩き方」ですね。

 「認知症の人は、周囲の環境をどう見ているのか、どんな気持ちなのかなど、本人の視点に立って考えていくものです。カードを使ったり、スライドや動画を見たりして推論していきます」

 

 ―ワークショップ開催には、専門の民間機関が認めるファシリテーター(中立的な立場から議論を導く人)の資格が求められます。

 「実は資格検定に4回不合格になりました。それまで良かれと思っていた支援が認知症の人の尊厳を無視したものとなっていたのです。例えば、普段使っていた炊飯器が壊れた時、すぐに新しいものを買うのではなく、使い慣れたものを直すことを考慮することなどが求められたのです」

 

 ―今月10日に認知症患者の喜びやこだわりに着目した「可能性指向」を学ぶ旭川初の研修会も開いています。

 「介助する人の多くは、認知症の困ったことに着目しがちです。しかし『マイクロハピネス』と呼ばれる、今でもできること、うれしいことなどに注目することで可能性を引き出せるのです。具体的には、認知症でも得意の料理ができれば、認知症カフェのようなところで料理する機会をつくってみてはどうかと、提案するのです」

 

 ―今後も新たな介護手法が生み出されるかもしれません。

 「介護現場は変わり続けなければならないと考えています。新しい手法があれば取り組んでいきます」(聞き手・弓場敬夫)

 

*取材後記

 旭川市内の認知症グループホームで開かれたワークショップ「認知症世界の歩き方」では、トイレで適切に用が足せなくなった高齢者について思いを巡らし、便器に目立つカバーを取り付けることなどが示された。

 要介護者には「定型」はなく、介護現場は常に試行錯誤が求められる。森さんらの取り組みが、介護現場の新時代につながることを願う。

 

 もり・ひであき 空知管内秩父別町出身。高校卒業後、深川市内の一般企業を経て、介護福祉士と精神保健福祉士の資格を取得。高齢者や精神障害者の支援にあたる。2024年4月に豊岡地域包括支援センターへ。同年8月にセンター長就任。

(2026年10月19日掲載)

 

※掲載情報は、取材当時のものです。閲覧時点で情報が異なる場合がありますので、予めご了承ください。


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