北海道新聞 旭川支社 + ななかまど

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北極星

道北各界で活躍する皆さんによるエッセーコーナーです。 2020年3月までの記事はこちら


鶴間智子(旭川・農業)*卒サラ農業

 畑仕事を楽しむ「卒サラ農業」に取り組み、今年で11年目を迎えます。そもそも私が趣味で野菜づくりを始めたのが、夫の転勤により私の実家に家族で引っ越した30年前。農家だった両親は年をとって農地を次々と手放し、残った畑で野菜などを栽培していました。

 当時、夫は電気工事会社のサラリーマン。それが60歳の定年を5年後に控え、「農家をやりたい」と言い出したのです。とはいえ、農作業の手伝いはまれ。長さ約2ミリのダイコンの種を手に「こんな小さな種から、こんな大きくて太いのができるのか?」と言うほど、何も知らない人でした。

 農業で生活する「脱サラ」は無理でも、年金に頼れる「卒サラ」ならできる、と夫婦で準備開始。私は、あさひかわ農協女性部に入り、直売所の会員にもなりました。夫も定年を迎えて「農家」の仲間入りです。

 初出荷の日は2人で早起き。野菜を次々と収穫しては袋詰めし、何とか出荷できました。直売所の閉店前、夫は「売れ残ったら、俺が買ってくる」と様子を見に行きました。完売を確認し、2人でガッツポーズだったのもいい思い出です。

 あれから10年、直売所は「夫婦の活躍の場」として、第二の人生を活気あるものにしてくれました。毎年毎年、失敗の連続ですが、先輩農家や新規就農の若い人たち、素晴らしい出会いに支えられてきました。

 

 つるま・さとこ 旭川市生まれ。農業。2012年から夫と畑20アールで4~11月にかけ野菜40種類を栽培し、あさひかわ農協の直売店「あさがお」に出荷する。野菜を使う料理のレシピ開発など農業振興に知恵を絞っている。66歳。

(2023年1月9日掲載)

 

※掲載情報は、取材当時のものです。閲覧時点で情報が異なる場合がありますので、予めご了承ください。


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