北極星
道北各界で活躍する皆さんによるエッセーコーナーです。 2020年3月までの記事はこちら
石黒誠(富良野・写真家)*母の家庭菜園
家庭菜園と庭づくりのリーダーだった母が昨年2月に入院して、夏の初め、あっという間に他界した。
「畑を作らなければ」。
ぽかんと残された1アールの家庭菜園を放っておけず、妻と子ども2人、父と一緒に畑を耕し、見よう見まねでいろいろと植えた。
レタスとジャガイモは、まあまあうまく育った。ピーマンとナスは、わずかな収穫のみで株が枯れてしまった。トウキビとカボチャはアブラムシ軍団に襲われた。
この冬、物置を片付けていると、園芸用土や植木鉢がホコリにまみれてあっちから、こっちからゴロゴロと出てきた。片付けの苦手だった母らしかった。
「こんなに材料があるのなら」と、植木鉢をきれいに洗って野菜の培養土にリーフレタスやコマツナの種を植えてみた。最初は徒長して倒れたが、暖かい窓際に置き、植物用の発光ダイオード(LED)照明でしっかり光を当てるとスイッチが入ったように育った。
図書館で借りた家庭菜園の本が寝る前の愛読書になった。水やりやトマトのわき芽摘みのことなど、知らないことだらけだ。がくぜんとした。5月の植え付けを目指し、仕事部屋の窓際でトマトやピーマン、ナスの苗が育っている。一応は本の通り、ずんぐりむっくりしてよい苗に見える。
今年はもうちょっとましな畑を作れるだろうか。
(2021年4月19日掲載)
※掲載情報は、取材当時のものです。閲覧時点で情報が異なる場合がありますので、予めご了承ください。