北海道新聞 旭川支社 + ななかまど

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どうほく談話室


中頓別町の地域おこし協力隊員 山口隼人さん(39)

町内でブドウ栽培 醸造所開設が目標*「最北のワイン文化」創出へ

 中頓別町の新たな特産品づくりを目指して町が2017年度から始めた醸造用ブドウの苗木の定植が本年度で終了する。当初は寒冷地特有の遅霜や積算気温の不足で、苗木の生育不良や果実の収穫量の少なさに悩まされたものの、近年の夏場の高温で昨年度は約900キロを収穫。7月から試験醸造したワインを初めて一般販売する。ブドウの栽培管理を担当し、ワイナリー開設も目指す町の地域おこし協力隊員、山口隼人さん(39)に、中頓別産の醸造用ブドウの特徴やワイン造りにかける夢を聞いた。

 

 ―中頓別に来たきっかけは何ですか。
 「愛知県内の酒造会社で、日本酒の『蔵人(くらびと)』として働いていましたが、札幌出身の看護師の妻が北海道で子育てをしたいと希望していました。道内で酒造関係の仕事を探す過程で、中頓別町が醸造用ブドウの栽培管理をする地域おこし協力隊を募集していることを知り、応募しました」

 

 ―ブドウ栽培の経験はありましたか。
 「なかったので、初めは試行錯誤の連続でした。中頓別では十勝管内池田町で開発された『山幸』という山ブドウ系品種を主力に栽培しています。中頓別は十勝と冬の寒さでは共通していますが、夏が短いため実が熟し切らないうちに冬を迎えてしまう。十勝で確立された栽培のノウハウが中頓別で使えず、道立総合研究機構中央農試(空知管内長沼町)や池田町に出かけては担当者を質問攻めにしていました。2024年5月から北海道主催の北海道ワインアカデミーを受講して、道内各地のワイナリーなどとつながり、栽培方法が見えてきました」

 

 ―醸造所の開設を目指しているそうですね。
 「はい。2024年6月に町主催のセミナーで中頓別産の山幸で試験醸造したワインを飲みました。山幸のワインは一般的に酸味が強くスパイシーと評されますが、中頓別産の山幸ワインはすっきりとして、ミネラル感がありました。ここの山幸の個性を生かし、中頓別の名前のついたワインとして売り出すためにも町内で醸造したいとの思いが募りました」

 

 ―ワイナリーは観光や産業振興にも寄与しますね。
 「ワインに合わせるチーズやエゾシカの肉を使ったジビエ料理も必要になるでしょう。ワイナリーやレストランを目指して観光客も集まってきます。人の流れを変えられる可能性もあります。そういう最北のワイン文化の創出に立ち会いたいと願っています」(聞き手・川村史子)

 

*取材後記
 中頓別町の醸造用ブドウ栽培は本年度に380本の苗を植えて一区切りとなる。2023年度から4年かけて、1・84ヘクタールの圃場に約2千本の山幸が植えられた。

 ワイナリーの運営には安定した収穫が必要。中頓別町の現状を踏まえると、醸造量が少量でも開設できるよう自治体の構造改革特区の「ワイン特区」の認定も必須だ。課題は山積みだが、山口さんの挑戦を見守りたい。

 

 やまぐち・はやと 埼玉県出身。酪農学園大学卒。東京のIT企業で農業分野のシステムエンジニアとして就職後、会社の業務再編を機に愛知県内の酒造会社に転職。2023年5月に中頓別町の地域おこし協力隊員に。看護師の妻と6歳の長女、4歳の長男と暮らす。
(2026年6月8日掲載)

 

※掲載情報は、取材当時のものです。閲覧時点で情報が異なる場合がありますので、予めご了承ください。


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