北海道新聞 旭川支社 + ななかまど

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北極星

道北各界で活躍する皆さんによるエッセーコーナーです。 2020年3月までの記事はこちら


嶋崎暁啓(豊富・自然ガイド)*雪を感じる

 突然、冬がやってきた。吹雪と共にやってきた。もう少し穏やかで情緒のある冬のはじまりだとうれしいのだが、自然相手なので文句を言っても仕方がない。

 子どもたちは大喜びで雪遊びに興じているが、大人たちは朝の除雪や猛吹雪のホワイトアウト、ツルツル路面の運転を考えると、やれやれという方が多いだろう。これから訪れる長くて厳しい季節。空から無数に舞い降りる雪を憎みたくもなるが、純白の雪は美しく、雪が創り出す光景は本当に素晴らしいので、恨めしいと同時に憧れてしまう。

 一口に雪と言っても、自然の中で出会う雪はさまざまだ。森の中の綿あめのようなフワフワ雪は飛び込んだり寝転んだりすると気持ちが良い。木の陰に吹きだまってギッシリ詰まった雪は上を歩くとバフバスとした独特の感触がある。吹きさらしの雪原では、表面がパリパリした最中のような感触が味わえる。風が吹いて高い木のこずえからサーッと音を立てて降り注ぐ雪は太陽の光を浴びて滝のように輝く。あちこち行く度に雪を食べ、場所ごとで味が違うと言う人もいる。

 奥深い雪の世界。冬が苦手な方も五感を使って楽しむことで前より少しだけ雪が好きになるかもしれない。この冬はいったいどんな雪に出会えるのだろう。見上げると、空の上で雪の精がほほ笑んでいる気がした。

(2023年12月4日掲載)

 

※掲載情報は、取材当時のものです。閲覧時点で情報が異なる場合がありますので、予めご了承ください。


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