北海道新聞 旭川支社 + ななかまど

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北極星

道北各界で活躍する皆さんによるエッセーコーナーです。 2020年3月までの記事はこちら


村山修(枝幸・ダイニングバー店主)*僕のいる町

 北緯45度、北半球の真ん中で南限の凍る海・オホーツクは、サケの回遊が始まり、秋めく季節になってきた。暑い日々が続いたとはいえ、季節ごとに水揚げされる魚が食卓を飾るので、移り変わりを感じることが出来るのはうれしい。そして、豊かさを実感するのは、口に入れたときなのは言うまでもない。

 母の車いすを押して散歩する裏庭の公園のすぐ目の前には、サケの定置網が仕掛けられている。早朝の漁を見ることはないけれど、海の景色とハマナスの実が赤く熟しているのに秋の訪れを当たり前のように感じつつ、高い気温に戸惑う。

 でも、定置網にブリが大漁という日常は、変化を正視しないといけない現実だ。それも小さな変化ではなく、ただ目の前で起きている規模のそれでもない。もはや複雑、諸説ありすぎて、説明ができないくらいだと思わなければならない、のだけれど。

 僕のいる町。カニやサケ、ホタテが自慢で新鮮で質の良い魚介と豊かな自然が当たり前の、北海道沿岸の普通の町。歴史でいうと、オホーツク文化期の出土品が世紀の発見となるやもしれないという。その発掘調査は、町の北端、国の名勝指定されている岬が平たんなオホーツクで威容を誇る近くで行われていた。

 当時の人々も享受していたであろう海の恵みを、今日の僕たちも美味しくいただく。サケが美味しい。
 
(2023年9月4日掲載)

 

※掲載情報は、取材当時のものです。閲覧時点で情報が異なる場合がありますので、予めご了承ください。


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