北海道新聞 旭川支社 + ななかまど

北海道新聞 旭川支社 + ななかまど

旭山動物園わくわく日記

全国的な人気を呼ぶ旭川市旭山動物園の話題やイベント、裏話などを紹介します。 旭山動物園ガイドとしてもお楽しみいただけます。 2020年3月までの記事はこちら


カモのお仕事*渡りで生物多様性に貢献


 4月の下旬ごろ、カモたちを外の放飼(ほうし)場に出すとすぐに卵を産む準備が始まります。まずは好条件の場所探しです。低い木の下、背の高い植物が群生している所、フキがたくさん生えている所など、目立たない場所に巣を作ることが多いです。

 あとは、飼育員の出入り口から離れた場所にあるお客さん用の通路のそばも人気が高いです。飼育員がよくいる場所よりもお客さんが通る道の近くの方が、彼らにとっては安全な場所ということになります。

 巣を作るのに良い場所が見つかると、まずはすり鉢状の穴を少し掘り、そこにせっせと枝や落ち葉を運んで来ます。その間に1日1個ずつ卵を産みます。通常カモは3個から14個くらい卵を産み、全部産み終わると本格的に卵を温め始めます。巣には最後の仕上げに自分の胸の羽を抜いてかぶせます。卵を全部産み終わるころには立派な巣が出来上がっています。

 雌は外敵に見つからないよう目立たない色をしているため、いることに気づかず「あっ!」と驚いてしまうこともあります。カモたちはその目立たない羽の色だけを頼りに、自分と卵を守らなければなりません。

 卵は28日ほどでかえります。卵からかえったばかりのヒナはベタッとしていますが、1日ほどたつとフワフワになります。羽が乾くとすぐに泳ぐことができます。母鳥についてエサを探し、疲れたときは母鳥の下に隠れて眠ったりします。野生では、産まれたヒナが1羽も成鳥になるまで生き残れないこともあります。しかし他の動物の餌になることによって、その動物の命を繫(つな)いでいます。また、カモたちは春は南から北、秋は北から南に渡りをします。カモたちが食べた植物の種や生き物の卵は渡りによって他の地域に運ばれ、その地域の生物多様性に貢献しています。

 普段あまり気にすることのないカモですが、実は私たちが住む地域でもこのような生命の営みがあり、生態系の一部になっているということを多くの人に伝えていきたいと思います。
(ととりの村担当 原田佳)
 

【写真説明】卵からかえったばかりのヒナと母親のカモ
(2023年9月4日掲載)

 

※掲載情報は、取材当時のものです。閲覧時点で情報が異なる場合がありますので、予めご了承ください。


GO TOP