北海道新聞 旭川支社 + ななかまど

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北極星

道北各界で活躍する皆さんによるエッセーコーナーです。 2020年3月までの記事はこちら


柴田えみ子(旭川・尊厳死協会道支部会員)*心変わり

 私が見ているとも知らず、のんびり窓の外で遊ぶたぬきさん。「あなたはコロナも明日の悩みもなく、その日その日をあるがまま生きていて幸せね」と話しかけ、ふと良寛和尚の言葉が脳裏に浮かびました。「死ぬる時節には死ぬがよく候」

 人は生まれたからには死ぬのが定めで逃れることはできません。あるがまま受け入れる事の大切さ。それは、どんな逆境に遭遇しようともじたばたせず現実を見据え受容する「覚悟」の事でもあると思います。迷いや恐れ、悲しみ、苦しみから抜け出る最良の方法はこれだ!と突然私の中で何かが吹っ切れました。

 大病から生還した私は、今までとは違う体の状態に、治癒したわけではない事実を突きつけられていました。疲労感、ふらつきなど何をするにも病気が重くのしかかります。高齢化も否めず、どうかすると落ち込みそうになる自分がいました。良寛和尚の言葉を言い換えてみました。「病気の時節には病気がよく候」

 慈愛に満ちた顔で良寛和尚がよしよしと頭をなでてくれたようでした。リハビリを続けながらその時々のできる事を精いっぱいやろう。そうやって笑顔で生を全うしようと新たな決意が生まれました。たぬきさんを眺めていてすっかり心変わりした私。決して化かされたわけじゃありません。

(2023年7月31日掲載)

 

※掲載情報は、取材当時のものです。閲覧時点で情報が異なる場合がありますので、予めご了承ください。


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