北海道新聞 旭川支社 + ななかまど

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北極星

道北各界で活躍する皆さんによるエッセーコーナーです。 2020年3月までの記事はこちら


村山修(枝幸・ダイニングバー店主)*さて、冬の楽しみは

 車窓からいろいろなお宅の花畑を眺めるのが、今年の母の楽しみだった。春の鮮やかなチューリップ、夏のピンと青空を向くヒマワリ、風に揺れるコスモス。町内を巡り、時には公園を散歩して黄色く一面に広がるスイセンに見事だね、と感嘆したりして過ごした。

 ひと雨ごとに秋が深まり、この頃は紅葉の色づきを楽しんでいるものの、もう雪が降ってくるね、楽しみなくなってしまうね、と話している。白一色の世界に間もなくなるのだろう。

 そんな時期に始まるのが「イズシづくり」。大量のニンジンやショウガを刻み、米や麹(こうじ)を支度し、主役のサケを待ち構える、のだけれど、残念ながら、昨年からやらなくなってしまった。それは高齢になった母のせいではなく、引き継がなかった側がいけなかった。いつまでも出来るものだと思いこんでいたけど、そんなことがあるはずもない。

 そして今年。年初に入院した母は、看護してくださった方から「村山さんのイズシ美味(おい)しくて食べたいわ」と言われていたようで、リハビリの動機付けにもなっていた。

 せっかくその時期になったけど、本人は、もうその気がないようなので、期待させた皆さん、紙面を借りて、ごめんなさい。それでも、クチグロマスの話をすると楽しげに、それで漬けるイズシは美味しいんだわ、と言っている。さて冬の楽しみになるのだろうか。
 
(2022年11月7日掲載)

 

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