北海道新聞 旭川支社 + ななかまど

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旭山動物園わくわく日記

全国的な人気を呼ぶ旭川市旭山動物園の話題やイベント、裏話などを紹介します。 旭山動物園ガイドとしてもお楽しみいただけます。 2020年3月までの記事はこちら


ヤマアラシ「ショーロン」*働き者 こつこつ穴掘り


 アフリカタテガミヤマアラシの「ショーロン」(雄、2歳)は、アフリカの動物として、かば館で暮らす。1匹だけだが、屋内放飼場(ほうしじょう)の穴掘りに忙しい。穴の中に潜む以外は、ヒーターの下や巣箱の中でじっとしているから、そのつぶらな瞳にはなかなかお目にかかれない。

 「ショーロン、ショーローーン」。担当飼育員の田中千春さん(49)は毎日、愛犬を呼ぶかのように声を掛け、掃除のために屋外へ呼び出す。すると、重そうな白黒交じりの針山を背負った体長約70センチのショーロンが短い足でノソノソと歩いてくる。攻撃的な見た目だが、ネズミの仲間。おもちゃを転がして、中に入れられた大好物のサツマイモを出して食べるのも得意だ。「頭がいいので自分の名前が分かるし、おもちゃもすぐ攻略するんです」と田中さん。

 野菜や果物などの餌を食べ、屋外に生えるクローバーまで食べる。目は悪いが、優れた嗅覚を頼りに餌までたどり着く。夜行性で寒さに弱い。ヒョウやライオンなどの外敵から身を守るため巣穴にこもる習性がある。

 背中のとげは40センチほどの長さ。体の線に沿って毛のように倒れているが、驚いた時には翼のように広げて周囲に警告する。とげは空き缶も貫通する鋭さで、近づく相手を死に至らせることもある。ヤマアラシの体から抜けて刺さるので、苦しむ相手を横目に見ながら、さっさと逃げることもできるという。

 ショーロンは昨年10月に長野市茶臼山動物園から来園した。硬い爪を持つ足を使い、一生懸命に穴を掘り続けて1年。深さ50センチほどのトンネルは、長さ1・5メートルはありそう。田中さんは「こつこつタイプの働き者」と仕事ぶりを見守るが、トンネル工事の残土は悩みの種だ。

 土捨て場は屋内と屋外の放飼場をつなぐ高さ1・2メートルの通路。土をどんどん積み上げ、半分近くふさがった場所も。飼育員は前かがみでは通れず、「腹ばいになるような姿勢で通らないといけない。腰痛持ちにはつらい」という。そんなことはつゆ知らず、ショーロンはきょうも穴を掘り進めている。
(鳥潟かれん)

 
【写真説明】好物のサツマイモの匂いを頼りに、屋外放飼場を歩くショーロン(西野正史撮影)
(2022年11月7日掲載)
 

 

※掲載情報は、取材当時のものです。閲覧時点で情報が異なる場合がありますので、予めご了承ください。


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