北海道新聞 旭川支社 + ななかまど

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北極星

道北各界で活躍する皆さんによるエッセーコーナーです。 2020年3月までの記事はこちら


國枝保幸(市立稚内病院長)*命がけの救急搬送

 2004年4月から新臨床研修医制度が導入され、大学医局に入る研修医が激減しました。そのあおりを受け、当院のような地方病院への医師派遣が中止されるようになりました。特に痛手だったのは北大病院循環器内科が引き揚げ、11年4月から、心筋梗塞などの緊急カテーテル治療が不可能になったことです。

 治療が必要な場合、170キロ離れた名寄まで運ばなければなりません。もともと当院で対応不可能な症例など年間40件ほどの搬送はありましたが、撤退以降は倍以上に増加。多い年には120件以上となり、三十数人の医師が手分けして搬送しなければなりません。

 救急車で運ぶのは半日がかりで、医師には大きな負担です。天候が良ければドクターヘリが一番早いのですが、天候不良の場合や夜間は救急車になり、特に冬期はその頻度が高くなります。数年前の暴風雪の日に起きた救急車の横転事故は衝撃でした。患者に問題はなかったものの、男性医師がけがを負い、縫合治療後に別の救急車を手配して名寄まで搬送しました。戻ってきた際の「搬送も命がけだ!」の一言は今でも耳に残っています。
 
 4月から11年ぶりに念願の循環器内科医が勤務しています。救えない命が少しでも減ること、救急搬送の負担が減ることを期待しています。 
 
(2022年6月20日掲載)
 
 

 

※掲載情報は、取材当時のものです。閲覧時点で情報が異なる場合がありますので、予めご了承ください。


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