北極星
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大橋美智子(旭川・農業)*花を愛(め)でる楽しみ
1年に1度だけ、値札を見ずに花を買う。それが年末の自分へのご褒美。大みそかに家族が寝静まってから床の間や玄関、台所、トイレに飾って、にんまりして一年を締めくくる。
ある年末、食品スーパーの一角にある花屋さんで花を選んでいた。花たちは皆「私をおうちに連れてって」と、にぎやかに訴える。「分かった。分かった」と返事をしてそっと優しく、だけどせかされるような気持ちで次から次へと抜き取っていく。
選んだ花の包装を待っていると、背後から声がかかった。「花を選ぶのが早かったですね。飾るイメージができてるんですか?」と。そして「うちの女房は、さっきからああしてずっと迷っています」と疲れ顔の紳士が言う。私は「値札を見なければ、サッと選べます」とは言わず、静かにほほ笑み、マダムを装った。
窓辺の洋ランは母の日に娘からもらったもの。ランは気難しいと思っていたが、わが家と相性が良いのかよく咲いてくれる。
ランは私がもらったものと私が母に贈った鉢植えとが二つ並んでいる。今年の正月は娘夫婦が孫を連れて来て、母も老人ホームから外出できて久しぶりに集まることができた。正月にはまだつぼみだったが、今は一つ二つと咲き始め、春が近いことを教えてくれている。
(2022年2月7日掲載)
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