北海道新聞 旭川支社 + ななかまど

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北極星

道北各界で活躍する皆さんによるエッセーコーナーです。 2020年3月までの記事はこちら


嶋崎暁啓(豊富・自然ガイド)*秋という季節

 北海道は夏が短く、冬が長い…。では秋はどうか? サロベツの場合、8月のお盆を過ぎると、風も空も急に変わり、湿原の装いも秋へと染まっていく。しかし、そこから平地に雪が降り始めるまで時間は、とてもゆっくり季節が進んでいく感覚がある。それまで一気に植物たちが芽吹き、花を咲かせ、実を付けてきた目まぐるしいほどの変化が落ち着き、躍動していた生命活動が止まったかのように見えるからかもしれない。もちろん秋は秋で渡り鳥が飛来したり、湿原や山々が紅葉したり、自然界においてはさまざまなイベントがあるのだが、不思議と穏やかに感じられる。

 秋、それは長く厳しい冬を迎える前の準備期間。動物たちにとっては森が雪に閉ざされる前に、しっかりと栄養を蓄える大切な季節。ゆっくりした静かな季節だなんて言ったら、忙しい動物たちに怒られてしまうかもしれない。幸い今年のサロベツは秋の実りがとても良かった。特にミズナラのドングリは昨年の大凶作が一転して、大豊作となった。森に入ると、パラッ、ポロッ、と上からドングリが落ちてくる音がする。

 クマ、シカ、リス…うれしそうに食べている姿が目に浮かぶ。私が感じるようなのんびりした時間の流れではないかもしれないが、彼らにとっても、秋はやはり良い季節だ。

 

(2021年11月2日掲載)

 

 

 

※掲載情報は、取材当時のものです。閲覧時点で情報が異なる場合がありますので、予めご了承ください。


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