北海道新聞 旭川支社 + ななかまど

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北極星

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國枝保幸(市立稚内病院長)*誤診率と医療満足度

 「誤診率」は海外で10~50%の報告があり、生前の臨床診断と死亡後の病理解剖診断を検討した米国の報告は25%という数字を出しています。4枚の死亡診断書の1枚は間違いということになります。しかし誤診であっても治療が必ずしも不適切とはならないところが医療の複雑なところです。

 この「誤診率」を患者の医療に対する「(不)満足度」に変えて考えてみます。通院患者の75%は現在の主治医と病院に満足しており、そのまま通院を続けますが、25%は不満を抱いているので、別の医師を探したり、病院変更を考えたりするわけです。通院先を変更し、そこで上手に診てもらえれば満足し、その病院の「檀家(だんか)さん」になります。こんなことが都会では普通に起こっているのだと思います。

 一方、地域で唯一の総合病院である市立稚内病院では、不満を感じる25%の患者は、旭川や札幌で満足な医療を受けると、地元に戻ってきて「やっぱり市立病院はだめだねえ…」という話になるわけです。この狭い街にいろいろなうわさ話が広がり、深く根を降ろし、市立病院に対する医療不信を払拭(ふっしょく)することを難しくしています。この25%という数字は、医療を受けるために旭川や札幌に出かけて行く「患者流出率」に相似していることは非常に興味深いところでもあります。

 

(2021年6月21日掲載)

 

 

※掲載情報は、取材当時のものです。閲覧時点で情報が異なる場合がありますので、予めご了承ください。


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