北海道新聞 旭川支社 + ななかまど

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北極星

道北各界で活躍する皆さんによるエッセーコーナーです。 2020年3月までの記事はこちら


柴田えみ子(旭川・尊厳死協会道支部理事)*かさぶた

 先日、転んで膝小僧を打ちました。帰宅後、ズボンをまくり上げると擦りむけて血がにじんでいるではありませんか。間違いなく「かさぶた」になりそう。かさぶたはがしができる!

 子供の頃は塾もゲーム機もなかったので、学校から帰ると外に飛び出し、缶けりやかくれんぼ、メンコ、ビー玉、まりつき、ゴム跳び、ままごと、雪合戦、そりなどに興じていました。

 雨の日以外は外遊びが主なので擦り傷や切り傷は当たり前でした。傷が治るにつれてできるかさぶたをはがすのは快感です。うまくはがれてピンク色の皮膚が出てくると小躍りしました。ただ失敗してまた出血することもあり、大人に見つかると叱られたものです。

 今思うとかさぶたはがしもスリルに満ちた遊びだったのかもしれません。夕焼け空にお寺の鐘の音が響くまで遊びほうけ、家に入るとちゃぶ台を囲み夕げが始まります。とうの椅子に腰掛け着物の袖からあめ玉を出してくれた祖父。転んで泣いても「大丈夫。そこから大きくなる」と言ってくれた父親。雪遊びで冷たくなった手を胸に入れて温めてくれた白いかっぽう着姿の母親。二度と帰ることのできない日々ですが、かさぶたの思い出とともに温かくよみがえってきました。

 さて、かさぶたですが子供の頃のように部屋の隅で丸くなってはがしました。

(2021年5月3日掲載)

 

※掲載情報は、取材当時のものです。閲覧時点で情報が異なる場合がありますので、予めご了承ください。


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