北海道新聞 旭川支社 + ななかまど

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旭山動物園わくわく日記

全国的な人気を呼ぶ旭川市旭山動物園の話題やイベント、裏話などを紹介します。 旭山動物園ガイドとしてもお楽しみいただけます。 2020年3月までの記事はこちら


ホッキョクグマ*ペアリング成功 出産期待


 
 昨年11月、ほっきょくぐま館の担当になりました。旭山では約5年ごとに担当替えを行うルールがあり、ちょうどそのタイミングでした。動物園を代表する施設なので光栄ですが、一方で複雑な思いもありました。

 ほっきょくぐま館では2002年のオープン以来、雄のイワンと雌をペアリングして繁殖を目指しましたが、担当者の工夫や努力もむなしく、ついに繁殖することはありませんでした。20年に新たな雄、ホクトが来園したことで、今度こそ繁殖の期待が高まりました。こうした中での担当替えとなったため「イワンの繁殖に苦心してきた人がホクトの繁殖にも挑戦し、成功してほしい」というのが、私の正直な気持ちだったのです。

 でも、同僚がそれぞれ新しい担当の動物に熱意を向けるのを見て思い直し、やるからには飼育係としての全キャリアをぶつけ、前任者からの命のバトンを引き継ごうと決意しました。

 引き継ぎ中の昨年11月、前任者と私が見守る中、ホクトと雌のピリカを初めて同居させました。しかし、ピリカは体の大きなホクトにおびえ、ホクトにかみついてしまいました。ホクトの耳の後ろからは出血も。もっとも、猛獣のペアリングではこの程度の闘争は起こります。以前担当したトラやヒョウでも軽い闘争がありましたが、粘り強く同居させることで繁殖に成功しました。ホッキョクグマのペアにも時間が必要でした。

 ホクトの出血が止まるとすぐに同居を再開。ホクトはピリカにほえられてもかまれても反撃せず、ピリカの警戒心を解くように根気よく接していました。

 そして今年2月末、ついにホクトとピリカが交尾しました。担当者とホクトの「粘り勝ち」で、3月上旬までに複数回の交尾を確認しました。確実とは言えませんが、もしかしたら11月末~12月ごろ、ホッキョクグマ出産のニュースをお伝えできるかもしれません。

 コロナ禍が続きますが、年末を迎えるころにはワクチンも普及し、にぎわいが戻った旭山ではホッキョクグマが子育てしている―。そんな未来を想像しながら動物と向き合う日々です。

(ホッキョクグマ担当 大西敏文)

(2021年5月2日掲載)

 

 

※掲載情報は、取材当時のものです。閲覧時点で情報が異なる場合がありますので、予めご了承ください。


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