北海道新聞 旭川支社 + ななかまど

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北極星

道北各界で活躍する皆さんによるエッセーコーナーです。 2020年3月までの記事はこちら


森川理加子(士別・演劇集団主宰)*この木、何の木?

 羊の出産シーズンになると腕がしびれる。悪友からは「五十肩だ」「老化だ」と笑われるが、この時期は除雪や屋根の雪下ろしに加えて、羊の産室の牧柵作りや畜舎の尿溝をふさぐための床板の修理で、ハンマーを振ることが多いのが原因だと思っている。
 特に畜舎の床板は汚物で腐りやすく、毎年かなり傷む。軽く扱いやすい板は特に劣化がひどい。いっそ業者に鉄板で作ってもらえばいいのだろうが、鉄板は重すぎて女の身で扱うにはちょっとつらい。
 そんなとき、親戚から車庫の改築で出たという廃材をもらった。古くなったとはいえ、かなり良い木材だったらしく、見た目以上に重く硬い。これなら床板に使っても丈夫そうだと思ったら、これがもう予想以上の硬さ。重たいハンマーでたたいても、全くくぎが刺さらず、次々とくぎが曲がるのだ。ならばとコンクリート用のくぎを買ってきたが、これまた火花が散るだけで一向に刺さらない。
 電動ドリルで小さな穴を浅く掘り、そこにコンクリート用のくぎを刺し込み、やっと何とかくぎを打てた。そうしてくぎを打つこと200本。腕がむちゃくちゃしびれている。五十肩でも老化でもない。腕を酷使する作業のせいであって、私はまだまだ若いのだ!。
 それにしても、この木、何の木? 気になる…。
 
(2021年2月8日掲載)

 

※掲載情報は、取材当時のものです。閲覧時点で情報が異なる場合がありますので、予めご了承ください。


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