北海道新聞 旭川支社 + ななかまど

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北極星

道北各界で活躍する皆さんによるエッセーコーナーです。 2020年3月までの記事はこちら


大槻みどり(富良野・カフェ経営)*エンディングノート

 札幌に住む両親は後期高齢者の二人暮らし。運転免許返納とステイホームが重なり、心身共に弱まってしまうのではと心配したが、最近はスマホデビューも果たし元気である。
 例年なら年末年始は、一同集まってにぎやかに過ごすのだが、今回は東京に住む兄夫婦も、医療従事者のいる弟家族も帰省しないことになっていた。私は自分のカフェが冬期休業に入った後、念のために2週間あけて一人で帰省した。
 子どもというのは勝手なもので、親が元気そうにしていると、いつまでも生きているような気がしてしまう。あちこち痛いと言いつつテキパキと動く母、いまだに髪が黒々とした父を見ていると、自分より長生きしそうだな、とさえ思う。
 そろそろ寝ようと客間に敷かれた布団に入った時、枕もとの書棚の中にエンディングノートという文字を発見し飛び起きた。葬儀屋さんが配布しているファイルのようなものだ。とたんに心臓がドキドキした。
 一度廊下に出て両親が寝静まっているのを確認し、深呼吸して、そおっとファイルを開いてみた。
 全身の力が抜けた。なんと中身は、母の大好きなプロ野球日本ハムの大田泰示選手の切り抜きでいっぱいだったのだ。エンディングノートさえスクラップブックにする母は本当に不死身かもしれない。

(2021年1月25日掲載)

 

※掲載情報は、取材当時のものです。閲覧時点で情報が異なる場合がありますので、予めご了承ください。


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