北極星
道北各界で活躍する皆さんによるエッセーコーナーです。 2020年3月までの記事はこちら
谷紀美子(名寄・無職)*祖父とボーリズ
この夏で65歳の高齢者となった。骨量、筋肉量ともに減少の一途をたどる。あまりにたるんだふくらはぎを見た夫に「そんなに筋肉がなかったら筋肉痛にもならないだろう」と言われる始末だ。
こんな年になると、不思議と親とか祖父母とかの人生に思いをはせることがある。最近、ボーリズの生涯を描いた小説「屋根をかける人」を読んだ。ボーリズは明治後期、米国から滋賀県近江八幡市に英語教師として来日。その後、建築家として活躍し、多数のボーリズ建築を残した。
私の祖父は滋賀県甲賀市に生まれたが、若い頃に函館に転居している。なぜ函館かと調べてみたら、勤め先の繊維卸商は近江商人が函館で創業したとあった。きっとでっち奉公に出され、函館の方で手が足りないから行けと言われたのではないかと想像している。
時代的に重なるし、滋賀県つながりで、祖父はボーリズのことを知っていたかもしれない。ボーリズが函館の遺愛女子高の講堂を手掛けた時には見物に行ったのではないだろうか。
祖父を知る人はもはや死に絶え、知るすべがなくて残念だ。あの世で祖父に会いたい。それまでは元気に生きたいので、行方不明の筋肉を取り戻すべくスポーツ教室に通い始めたけど、週一だし、ゆるい運動だから、たぶん気休め。
(2022年8月22日掲載)
※掲載情報は、取材当時のものです。閲覧時点で情報が異なる場合がありますので、予めご了承ください。