北海道新聞 旭川支社 + ななかまど

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北極星

道北各界で活躍する皆さんによるエッセーコーナーです。 2020年3月までの記事はこちら


村山修(枝幸・ダイニングバー店主)*変わらないもの

 そのうち慣れるものだろうとたかをくくっていたけれど、そうでもなく、人と会わず、会話が減り、出かけることもない日常に緊張が続く。

 それでも、ギョウジャニンニクの醤油(しょうゆ)漬けをつくり、ウドやタラノメの天ぷらを揚げ、サクラマスにヤマワサビを添えて、いつもの春を楽しむのは変わらない。家の周りには、ミズバショウもヤチブキも咲き、新緑も目に映える。

 生活は一変したのに、四季は律義に巡るので、何とか気持ちの切り替えは出来ているのかもしれない。毎日のニュースの冒頭は1年以上同じでも、この春、記録をたどれないほど数十年ぶりに、群来(くき)が沿岸を乳白色に染めた。その様子がドローンで撮影され、鳥からの目線のように海を眺められたのは、新鮮だった。もちろん、とれたてもおいしくいただいた。

 変化した日常を感じる、などと言いつつも、十分に春の味覚を楽しんでいる。「黙食」には、慣れないといけないし、しばらくは、我慢しなければならないけれど。

 店は休みがちでも、お構いなしに、前浜ではウニの旬を迎えるし、カラフトマスも回遊してくるだろう。聞き慣れない言葉がどんどん出てくるけれど、季節の魚を味わえる日常を親しい友人らと楽しめる日が来るのを、待ちたいと思う。

 
(2021年5月28日掲載)

 

※掲載情報は、取材当時のものです。閲覧時点で情報が異なる場合がありますので、予めご了承ください。


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