北海道新聞 旭川支社 + ななかまど

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北極星

道北各界で活躍する皆さんによるエッセーコーナーです。 2020年3月までの記事はこちら


國枝保幸(市立稚内病院長)*地域医療を守る住民運動

 兵庫県丹波市に県立丹波医療センターがあります。丹波市で唯一、小児の入院を扱っていますが、前身の旧県立柏原(かいばら)病院だった10数年前、当時2人しかいない小児科医の1人が退職の意向を示しているという衝撃的な記事が地元紙に掲載されました。もし小児科がなくなると産科医療もできなくなり、この地域の周産期医療が崩壊してしまいます。このことを知った地元の子育て中の主婦が集まり、2007年「県立柏原病院の小児科を守る会」を立ち上げました。

 小児科医療を守るために「コンビニ受診を控えよう」「かかりつけ医をもとう」「お医者さんに感謝の気持ちを伝えよう」と三つのスローガンを掲げ、地道な運動を展開しました。その結果、小児救急外来の受診患者数は運動前の半分に減り、退職を表明していた医師は踏みとどまり、さらに働きやすい環境を求めて小児科医が増えることになりました。地域医療を応援する住民運動の草分け的存在です。

 新臨床研修医制度の導入によって地方の医療崩壊が全国的に問題になって以降、こういった住民運動が全国的に広がっています。いま地域住民に必要なことは、求めるだけの姿勢を改め、自分たちが地域医療を守るために何ができるかを考えることではないか―。そんな願いの中、15年10月に誕生した「地域医療を考える稚内市民会議」も活動を続けています。
 
(2022年11月28日掲載)
 

 

※掲載情報は、取材当時のものです。閲覧時点で情報が異なる場合がありますので、予めご了承ください。


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