北海道新聞 旭川支社 + ななかまど

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北極星

道北各界で活躍する皆さんによるエッセーコーナーです。 2020年3月までの記事はこちら


柴田えみ子(旭川・尊厳死協会道支部理事)*ほこちゃん

 旭川の常磐公園を友人と散歩していた時、黒いチワワと出合った。名前は「ほこちゃん」。飼い主の上田さんとは初対面だが、「どうぞ」と私たちにチョコレートの包みを1粒ずつくれた。「優しい飼い主さんで幸せね」とほこちゃんに声を掛けると、実は虐待の末に捨てられた保護犬というではないか。しかも保護前に脚1本を折られており、今も歩き方はぎこちない。

 「なぜか、犬を保護する運命で」。1時間近く話し込んだ上田さんは苦笑い。職場から車で帰宅中、ゴールデンレトリバーを保護したこともあるという。道路の真ん中に寝ていたため上田さんが急ブレーキをかけ、運転席のドアを開けて外に出たら、待っていたかのように車内に飛び込んで来た。ガリガリに痩せ、毛は汚れてボロ雑巾のよう。一目で心無い飼い主に捨てられたと分かったそうだ。賢い犬だったから命を懸けて救いを求めたのだろう。

 コロナ禍で犬を飼う人が増えた半面、保護犬も増えているという。別れ際、犬たちを保護しながら、やりきれない思いも募る上田さんは「縁あってこの地球で一緒に生きている命を粗末にしたくない」と語った。彼らの後ろ姿を見送りながら、ほこちゃんと同じ13歳で、姿もよく似た愛犬「そら」をみとったばかりの私は「保護される犬が増えませんように」と祈った。

(2022年10月10日掲載)

 

※掲載情報は、取材当時のものです。閲覧時点で情報が異なる場合がありますので、予めご了承ください。


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