北海道新聞 旭川支社 + ななかまど

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北極星

道北各界で活躍する皆さんによるエッセーコーナーです。 2020年3月までの記事はこちら


森川理加子(士別・羊農家)*古木

 わが家の庭には3本の梨の古木がある。そのうちの1本がこの春に剪定(せんてい)して以来、新たな葉をつけることもなく、とうとう枯れてしまったか、と残念に思っていたところ、最近になっていくつもの若葉が生えてきた。ああ、まだ生きていたのだ、とうれしくなった。

 この木は父によると、80年前に植えたものらしい。梨の寿命がどのくらいかは知らないが、去年まで毎年ちゃんと実をつけていたのだからたいしたものだ。

 さらに古い木がある。ちょうど100年前の大正11年(1922年)に祖父がこの地に入植した際、山の頂上に樹齢20年から30年くらいと思われる、立派な2本の桜が生えていた。見事な花を咲かせる桜を見て、この桜を残して山を開拓することにしたそうだ。

 だから樹齢は、推定120~130年。とくに手入れもされていない木は、脇から生えたと思われるいくつもの幹が絡み合って1本の木を成している。おそらく祖父が見ほれた桜の幹はとうに腐って折れているのだろうが、同じ根元から次々と枝分かれし新たな若葉を茂らせながら命をつなげていると思うと感慨深い。

 この桜は毎年、何人ものカメラマンが写真を撮りに来る。夕方のテレビ番組でも紹介された。この桜のように、新たな命を芽吹かせた梨の木も、また再び実をつけてほしいものだ。
 
(2022年8月1日掲載)

 

 

※掲載情報は、取材当時のものです。閲覧時点で情報が異なる場合がありますので、予めご了承ください。


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