北海道新聞 旭川支社 + ななかまど

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北極星

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藤沢隆史(礼文町教委主任学芸員)*歴史の二面性

 昨年1月、国内で最初の新型コロナウイルス感染症が判明して以来、感染の増加と減少を繰り返しつつ、今は増加傾向が続く時期となっています。記録に残る過去の歴史で2度、礼文島でも大きな病気の流行がありました。それは江戸時代と昭和時代です。

 江戸時代では1804年(文化元年)とその翌年に流行した麻疹と天然痘です。いずれもウイルスによって引き起こされる病気で、特に天然痘は致死率が高かったため、人々に恐れられる病気でした。この二つの疫病の流行によって、島に暮らしていたアイヌ民族の人々が100人以上も亡くなったとされています。

 昭和時代では奇病とも言われたエキノコックス症です。これは、エキノコックス条虫という寄生虫が原因となる病気です。動物のふんに含まれる寄生虫卵が井戸などからの飲み水を通して人体に取り込まれ、ふ化した幼虫が肝臓に寄生してさまざまな症状を引き起こし、原因の解明や治療法が確立するまでは死に至る病気でした。

 1937年(昭和12年)に初めて確認され、最後の死亡例が出た70年に町が終息宣言を行いました。実に33年間という長きにわたる闘いでした。

 こうした先人たちの苦難や、残された遺族の悲しみを思うとき、歴史の正と負、あるいは光と闇の二面性が改めて見えてきます。

 

(2021年8月30日掲載)

 

 

 

※掲載情報は、取材当時のものです。閲覧時点で情報が異なる場合がありますので、予めご了承ください。


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