北海道新聞 旭川支社 + ななかまど

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北極星

道北各界で活躍する皆さんによるエッセーコーナーです。 2020年3月までの記事はこちら


石黒誠(富良野・写真家)*シーソラプチ川へ

 空知川の支流にシーソラプチ川がある。十勝岳山系の南斜面から湧き出し、清流となって南富良野町の落合で他の支流と合流する。この川の自然や見どころを紹介する小冊子を作る仕事を請けることになり、この夏から取材を重ねている。
 ラフティングという川下りの盛んな所だ。川岸で樹木や花を調べていると、遠くから歓声が聞こえ、やがて大きなボートが下ってくる。乗っている6、7人はたいていみんな笑顔だ。跳び込みたくなる透明な水、しぶきを上げる落差のある瀬、一緒にこいでゴールを目指す一体感…。自然と笑顔になるのだろう。
 胴付きの長靴をはいてボートが下るコースをゆっくりと歩いてみた。川岸までヤナギやハルニレの大木が茂って、木陰をつくっていた。透明な緑色の淵にはウグイの大きな群れが揺れていた。流れのゆるい小さな支流に隠れていたのはイトウの稚魚たち。浅い瀬で石をひっくり返すとハナカジカが次々と出てきた。
 8キロほど川と森をジグザグに歩いたら足は重かったが、水と森とたくさんの魚を見た満足感があった。
 川から上がる前に大きな岩に座って休んでいると、午後の部のラフトボートが手を振りながら何艇も下って行った。私もアンパンをほおばりながら手を振り返した。つい、笑顔で。

(2020年10月5日掲載)

 

※掲載情報は、取材当時のものです。閲覧時点で情報が異なる場合がありますので、予めご了承ください。


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