北海道新聞 旭川支社 + ななかまど

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みんなの放課後

「放課後」とは、勉強や仕事などの本業以外に過ごす時間のこと。 スポーツや文化活動など夢中になれる“何か”に真剣に打ち込んでいるチームや団体の皆さんを、ジャンルや老若男女を問わず紹介していきます。


Vol.63 「育て、加工し、販売する」一貫した学び・・・「旭川農業高校食品科学科」

 

みんなの放課後 特別編 

旭川農業高校では、一年を通して多くのイベント等に出店し、自分たちで生産・加工した製品や、企業とのコラボ商品を販売し好評を博しています。通常は学生や社会人の「課外活動」を取り上げるこのコーナー、今回は本業である「学び」の紹介です。

 

 

雨を含んだ曇り空が広がる9月の終わり、訪れたのは旭川農業高校校舎の裏手にある「微生物基礎実習室」です。食品科学科3年の生徒たちが白衣に身を包み、数日後に控えた販売会に向け、ヨーグルトの商品作りを進めていました。「牛乳に種菌を入れて撹拌(かくはん)し発酵させます。今日は販売用のカップに移してラベルを貼る作業ですね」と話すのは、同学科の梅田教諭。販売するヨーグルトや冷凍をしないソーセージは作り置きができないため、イベント直前ギリギリのタイミングで製造するのだそう。

 

 

同校では年間で10数回の販売会を行っており、消費者と直に触れ合うことで、「商品がどう生まれ、どのように生活者に届くのか」を体感しています。「食品科学科の学びは製造がメインですが、それだけでなく、作物の生産から流通までを通して学ぶことで、自分が今どの位置を担っているのかを理解できます。学びの成果を地域の皆さんに見ていただくことは、生徒たちの励みになりますし、楽しんでやっていますね」。

 

学校や地元の収穫物を加工し、新しい付加価値を創造する課題研究にも力を入れており、高校生ならではの自由な商品開発力は各方面から注目されているほど。6次産業化の重要性が叫ばれる中、農業高校の在り方も旧来とは大きく変わり、新しい農業がここから生まれているようです。

 


コミュニケーションを通して
自ら考える力を

旭川農業高校 教諭
梅田 英一さん(うめだ えいいち)

食品科学科では、お客様の口に入るものを製造するので、事故が起きないよう衛生管理については特に注意するよう指導しています。おかげさまで生徒の意識が非常に高く、こちらが気付かされる場面もしばしばです。 こうした実習で円滑に作業を進めるためには、周囲と意思を疎通し協力し合うことが大切。対話でコミュニケーションをとり、どうしたら効率よく事が運べるのかを自分で考えられるようになってもらうことが目標ですね。コミュニケーション力を高め、気が付く人、気が利く人になってほしいと願っています。

 


 

食の豊かな可能性を今、そして未来へ

近年の農業高校は、農業とは縁のない一般家庭の生徒が多く、食品科学科はその傾向が強いそう。「元々食に興味があって、食品製造のことが学べると知ってこの学校を選びました」と話す石崎聖(さら)さんもその一人。卒業後は保育関係の進学を目指しており、「ここで学んだ食のことを子どもたちの保育に役立てたい」と先々を見据えています。


石崎聖(さら)さん(左)、田中夏愛(なちか)さん(右)

 

「ドライモッツァレラチーズの成形が苦手」と笑う田中夏愛(なちか)さんは、パティシエの道を志望して入学。調理師の専門学校に進む予定で、「衛生管理や食品加工の知識など、パティシエを目指す上で必要な学びの特性を今後に生かしていければ」と話します。

 

 

販売会の思い出を聞いたところ、「小さい子からお年寄りまで幅広い年齢層の方と関われてためになった」(田中さん)、「前の日に商品を買って行かれたお客様が次の日やって来て、『美味しかったよ』とわざわざ伝えてくれたことがあり、うれしかったです」(石崎さん)と話してくれました。次回の販売会は10月6日(土)10:00〜15:00、イトーヨーカドー旭川店「農業高校 食彩フェア」に参加。同店と共同開発したコラボ弁当「豚ザンギ弁当」ほか、ヨーグルトなども販売します。どうぞお楽しみに。

 

 

 

※掲載情報は、取材当時のものです。閲覧時点で情報が異なる場合がありますので、予めご了承ください。


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