北海道新聞 旭川支社 + ななかまど

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こちら、ななかまど編集部


Vol.03 いきなり道北牛乳サミット!


旭川および近郊で搾乳された新鮮な牛乳は、どれもノンホモ・低温殺菌だ

 

放牧されている乳牛は
しあわせな乳牛

広々とした牧場でのんびり牧草を食(は)む乳牛の姿は、酪農王国北海道ならではの風景だが、放牧されている乳牛は意外に少ない。一生を牛舎の中で過ごす乳牛の方が圧倒的に多いのだ。人間だって外の空気が吸いたくなる。乳牛も同じだ。放牧された乳牛と、牛舎の中で一生を終える乳牛。その違いは牛乳の質に現れる。
放牧されていない乳牛はストレスが溜まりやすく、搾った牛乳の中に「体細胞」と呼ばれる細胞が増加し、風味が落ちる傾向があるため、ストレスが少ないことが理想なのだ。殺菌方法には「高温殺菌」と「低温殺菌」があるが、「低温殺菌」は清潔な搾乳環境が求められ、牛乳本来の風味が味わえるのが特徴。また市販されている牛乳の多くは乳脂肪を均質化(ホモジナイズ)しているが、均質化していない(ノンホモ)牛乳も本来の風味が生きていて、腐敗しにくいという。乳脂肪が表面に固まっていることがあるのもその特徴だ。

 

乳牛をしあわせにする
アニマルウェルフェア

日本の畜産業界で家畜は「経済動物」と呼ばれ、経済性を優先させる傾向がみられたが、現在世界的に「アニマルウェルフェア」が主流となっている。これは動物の立場に立ち、動物の「生活の質」を高めるという考え方だ。日本でも2016年に「一般社団法人アニマルウェルフェア畜産協会」が発足し、その定義を次のように表現している。「感受性を持つ生き物としての家畜に心を寄り添わせ、誕生から死を迎えるまでの間、ストレスをできる限り少なく、行動要求が満たされた、健康的な生活ができる飼育方法をめざす畜産」。ひと言で表すと「この農場に生まれてきて良かった」と思ってくれるような家畜が増える取り組みだ。

 

旭川の農場から集めた
低温殺菌した3種の牛乳

今回の「いきなり道北サミット」のテーマ食材は「牛乳」。その条件は「アニマルウェルフェア」を意識して、放牧牛の低温殺菌処理されたノンホモ牛乳。1軒目は旭川空港そばの「田村ファーム」。場内のショップではソフトクリームやサンデーが楽しめる人気店だ。2軒目は神居町共栄の山間にある「斉藤牧場」。牛が切り拓いたことで知られる牧場で、角をそのまま残しているのも大きな特徴だ。3軒目はたった7頭の牛で酪農を営む「クリーマリー農夢」。「一般社団法人アニマルウェルフェア畜産協会」の立ち上げにも関わった農場だ。

 

酪農王国でもない旭川に、放牧し低温殺菌処理をした牛乳を提供する牧場が3軒もあることのすごさを実感しながら「道北牛乳サミット」は開催された。

 

「の〜〜こ〜〜!!」。
一口目から編集長の雄叫びが上がる。「クセがなくて飲みやすい!!」。「オレ、この味が一番好きだな〜〜!!」。思い思いの感想が8月のサミット会場に飛び交う。3種類の牛乳の味と好みはそれぞれだが、共通していることは「味が濃い」ということだ。こんなおいしい牛乳を提供してくれるしあわせな牛が増えてくれること願いながら、参加者のお腹をタポタポにした「いきなり道北牛乳サミット」は閉会した。


3種類の牛乳は味だけではなく色にも違いがあることがわかった

 

北海道胆振東部地震からの
復興を願いながら

9月6日に北海道を襲った「平成30年北海道胆振東部地震」。酪農家もその影響を受け、集荷されずに大量の牛乳が廃棄された。搾乳や餌やり、牛舎の清掃を電気でおこなう農場も多いことも震災の被害を複雑にしていた。そんな被害を受けた酪農家の1日も早い復興への思いを込めて、本企画を執筆させていただいた。〈文 ミニぐるめ君〉

 


 

 

ご協力いただいた3軒の酪農家さん

 

東神楽町
アイス工房 田村ファーム 「clover」 さん
TAMURA FARM MILK


旭川空港の向かいにある牧場

●牛乳を飲んでみた感想●

富樫/香りが強くて濃厚。甘くてとても飲みやすい。
ハマ/3つの中で一番濃厚。加工されているみたいに美味しい。ザ牛乳。ホットミルクのような安定感。
タナカ/ゴクゴク飲めそう。暑い日に冷たくして飲みたい。
カトウ/甘い。飲みやすい。
かな/牛乳は苦手だけど、一番飲みやすかった。

 

乳牛は搾乳期間外は放牧しているが、搾乳期間は「フリーストール」と呼ばれる牛をつながずに自由に歩き回れる牛舎で飼育している。場内のショップ「clover」では牛乳がテイクアウトできるほか、この牛乳で作ったソフトクリーム(300円)や、アイスクリーム(300円)、サンデー(500円)などが味わえる。

【頭数】約400頭【飼料】○搾乳牛[通年]サイレージ、デントコーン○非搾乳牛は夏期のみ牧場の牧草

 

アイス工房田村ファーム「clover(クローバー)」

東神楽町東2線16号97番地・TEL:0166-83-7570
時間/10:00〜18:00
定休/[4・5・10・11月]水曜日、[6〜9月]無休、[12〜3月]不定休
席数/12席
駐車場/有
購入場所/アイス工房田村ファーム「clover(クローバー)」(直売)
http://tamurafarm.com/

 

 


 

旭川市
旭川斉藤牧場 さん
本物の自然放牧牛乳


野趣あふれる牧場

●牛乳を飲んでみた感想●

うご/牧草の匂いを感じるさわやかな飲み口。味が濃く加糖されたような甘さを感じる。
かな/エサや自然など育った環境がそのまま感じられる、個性的な香りが印象的。
さなとも/バニラのような甘さ。飲むだけでなくお菓子に使いたい。
あつを/キレのあるさわやかな味。

 

「蹄耕法(ていこうほう)」と呼ばれる、牛の力で山を牧草地に変えた「自然と牛と人」が共生する奇跡の牧場。一年中広大な牧場を牛たちが自由に歩き回っている。乳牛の搾乳できる期間は2〜3年といわれているが、斉藤牧場は常に10年前後の母牛がいることからも環境の良さが伺える。

【頭数】約58頭 【飼料】[夏期]牧場の農薬を使わない牧草や野草[冬期]夏の間に刈り取った牧草を乾燥させた干し草や、発酵させたサイレージ

 

斉藤牧場

旭川市神居町共栄469・TEL・FAX:0166-63-2012
問合せ時間/10:00〜17:00
定休/無休(不定休)
購入場所/コープさっぽろ(シーナ、ルミネ、旭川ツインハープ店、旭川神楽店)、道北アークス(ウェスタンパワーズ店・川端店・北彩都店、スーパーアークス西神楽店・パルプタウン)ほか
http://www.saitou-bokujo.org/

 

 


 

旭川市
クリーマリー農夢(ノーム) さん
農夢のノンホモ低温殺菌牛乳


自宅のすぐ裏が牧場

●牛乳を飲んでみた感想●

あつを/一番甘く、最初の味が優しい。生クリームを付加したかのような濃厚さがある。大好き!
みずお/甘いがしつこくない。味もしっかりしていて美味しい。
一本松/甘さと深さが一番。育ちの良さを感じる風味。牧場の風景が見えるようでした。
ハマ/甘くて、うまさが後を引く感じ。

 

7頭の牛に家族のような愛情を注ぐ酪農家。牛や牛舎の清潔さから愛情の深さがうかがえる。牛乳のほか、場内の工房でチーズやヨーグルトを製造し、宅配やクリーマリー農夢直売ショップ「MILK BAR」で販売。代表の佐竹秀樹さんは「一般社団法人アニマルウェルフェア畜産協会」の立ち上げにも関わり理事を務める。

【頭数】7頭 【飼料】[通年]遺伝子組み換えでない配合飼料、道産ビートパルプ、旭川産小麦、乾燥牧草[夏期]農薬や化学肥料を使っていない牧場の牧草がプラスされる

 

クリーマリー農夢 直売ショップ「MILK BAR」

旭川市神居町上雨紛539-9・TEL:0166-62-9380
時間/9:00〜16:30
定休/水、木曜日
駐車場/有
購入場所/クリーマリー農夢 直売ショップ「MILK BAR」、JAあさひかわあさがお(神楽店、永山店)
http://www7a.biglobe.ne.jp/~creamery-gnome/

 

 

※掲載情報は、取材当時のものです。閲覧時点で情報が異なる場合がありますので、予めご了承ください。


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