北海道新聞 旭川支社 + ななかまど

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どうほく談話室


中頓別・浜頓別町森林組合前組合長 峰友武さん(81)

林業の魅力 次世代に伝え続ける*木育の出前授業 個人でも植樹

 【中頓別】森に囲まれ、かつて林業が主産業だった中頓別町。中頓別・浜頓別町森林組合の前組合長の峰友武さん(81)は、森林の果たす役割や林業の魅力を次世代に伝える取り組みを続けている。活動に込めた思いや今後の展望を聞いた。
 
 ―林業の担い手不足が深刻です。
「戦後に植林した人工林が今利用期を迎え、伐採や植林などで人手が必要になっているにもかかわらず、担い手が足りない状況です。宗谷管内の森林組合などで構成する『宗谷地域林業担い手確保推進協議会』が2017年に設立され、初代会長に就任しました。会長を交代する昨年まで、宗谷管内の高校を回り、森が雨水を浄化して水をきれいにし、土壌流出や土砂崩れを防ぐ役目を果たしていることなどを伝えてきました」

 -手応えはいかがですか。
 「農業や水産業は説明できても、林業とはどんな仕事かを知らない生徒がほとんどだと知りました。昭和50年代までは小さな町にも製材所がありましたが、安い輸入材に押され、どんどん廃業し、林業が身近ではなくなっています。後継者不足を嘆くだけでなく、林業に携わる側のPR不足を感じました」

 -林業の魅力とは何でしょう。
「生物にとって森は『恋人』といえるほど大切な存在。林業は地球環境を守ることにつながる仕事で、やりがいがあります」

 ―今年5月までは森林組合の組合長でした。
 「組合の主な仕事は、伐採期を迎えた木を切り販売することと、伐採後に苗木を植え、大きく健全に育つように管理することです。かつて木の切り出しは男たちの仕事でしたが、今は機械を使いますから、女性も多く活躍しています。中頓別・浜頓別町森林組合では、道立北の森づくり専門学院(旭川)の卒業生も働いています」

 ―自身でも植林を続けているそうですね。
 「私は根っからの森好き。手入れがされずに放置された山林を20代の頃から少しずつ買い始め、いまは50ヘクタールを所有しています。山林といっても、ササが生い茂っているような土地もあり、100年後に向けて植樹をしています。近年はエゾシカやネズミの食害が深刻で、せっかく苗木を植えても食べられてしまうのが悩みです」

 -町内の小中学校を中心に、木育の出前授業もしていますね。
 「子どもたちが興味を持ちやすいように、北海道森と緑の会(札幌)が発行する漫画冊子『北の森漫画』を配布するなど、工夫しています」

 -今後の展望は。
 「地球温暖化を食い止める特効薬はなく、地球全体で毎年切った分だけ木を植え、森林を増やしていくしかないと考えています。そのために森づくりの担い手を増やしていきたい。15日には地元の小学生と植樹をします。『明日、命が尽きようとも今日木を植える』を信条に頑張っていきます」(川村史子)
 
*取材後記
 出会いのきっかけは、峰友さんの所有する森でフィンランド人の男性がサウナ小屋を建てたという取材だった。現地を訪ねると、木々の木漏れ日と小川のせせらぎが美しく、峰友さんが森を愛する理由が理屈ではなく、五感で理解できた。
 子どもたちと植樹をしたり、仲間と炭焼きを楽しんだり。峰友さんの話を聞いていると、自分も中頓別の森で遊びたくなる。
 
 みねとも・たけし 1943年、徳島県生まれ。戦時中、疎開のため両親とともに中頓別町に移る。中頓別中卒業後、営林署勤務などを経て、木材業の会社を創業。建設業なども手掛けたが、後継者不在のため2002年に廃業し、現在は森づくりを中心に活動する。

(2024年10月07日掲載)

 

※掲載情報は、取材当時のものです。閲覧時点で情報が異なる場合がありますので、予めご了承ください。


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