北海道新聞 旭川支社 + ななかまど

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どうほく談話室


遠別在住の動物写真家 泊和幸さん(68)

野生動物の魅力伝え半世紀*命のリレー 輝き追い求め

 【遠別】町内在住の写真家泊和幸さん(68)は、古里遠別を拠点に、普段見ることができない野生動物の姿を半世紀にわたり写真に記録している。今年2月には6冊目の写真集「里山の宇宙(くうかん) キタキツネ」(彩流社)を出版した。道北の大自然の中でたくましく生きる野生動物や撮影の魅力を聞いた。
 
――今年2月に写真集を出版し、札幌で出版記念の写真展を開きました。
 「写真を見た多くの人から『普段見ることができないキタキツネの躍動感ある姿に感動した』との声をいただきました。写真展には6日間で千人以上が訪れ、今後の撮影の励みになりました」

――野生動物の撮影を始めたきっかけは。
 「実家は農家で、幼少のころから動物や昆虫が大好きでした。中学時代まで昆虫標本を作っていましたが、昆虫がかわいそうになり、絵を描くことにしました。ところが、うまく描けなかった。遠別農高3年生、18歳のときにアルバイトしてカメラを買って昆虫を撮影していました。そんなとき、遠別川沿いの森でウミワシ類が集団で巣を作っているのを見て感動し、猛禽(もうきん)類を撮り始めました」

――撮影する上で心掛けていることはありますか。
 「動物と人間の生活リズムは違う。自分の都合を捨てないといけない。物音を立てて動物を驚かせたりしないよう、撮影前は1時間以上、動かないでじっと座ったりしています。動物が安心し、できるだけ自然に溶け込んでから撮影を始めるようにしています。どんな状況でも焦らないように、常に頭の中で写真の構図を考えています」

――今年で撮影活動を始めて50年になります。
 「『命』をテーマに撮影を続けてきました。農業の傍ら、写真家の道を諦めずにやってこれたのは、動物たちの献身的な子育ての姿や、普段見せない素顔に癒やされてきたからです。中でもキタキツネがサクラマスを捕らえる姿は何度見ても感動します。子ギツネのために川に飛び込んで暴れるサクラマスと15分以上格闘し、狩りをする姿は生への力強さを感じます」

――撮影したい動物や今後取り組みたいことを教えてください。
 「今年の7月で48年続けてきた農業を辞め、撮影活動に専念できるようになりました。今はミサゴの撮影に力を入れています。垂直に海や川に飛び込んで魚を捕らえる直前の姿は迫力がある。今後機会があれば、ヒグマも生息する山奥という厳しい環境での撮影になりますが、子育てをする夏のクマタカの姿を撮りたいですね。引き続き写真展を道内外で開き、動物たちの命のリレーを写真で広く伝えていきたい」
(聞き手・天塩支局 田中雅章)
 
 
*取材後記
 先日、遠別町の山奥でのアオサギの撮影現場におじゃました。夏は朝4時ごろから夜6時ごろまで同じ場所でカメラを構え、至極の一枚を追い求めシャッターを切り続けるという。

 「ヒグマとオジロワシを食物連鎖の頂点に、野生動物のバランスがとれている。四季を通じて動物の命輝く姿が見られる」。遠別の魅力を熱く語ってくれた。動物への愛あふれる次の写真集が今から待ち遠しい。
 
 とまり・かずゆき 1955年、遠別町生まれ。遠別農業高卒。2015年に写真映像販売会社「野生塾」を設立し、代表を務めている。著書や写真集は「鷲(わし)たちとボクの30年」(北海道新聞社)、「飛べない白鳥ハク」(彩流社)など6冊。
(2023年8月21日掲載)
 

 

※掲載情報は、取材当時のものです。閲覧時点で情報が異なる場合がありますので、予めご了承ください。


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