北海道新聞 旭川支社 + ななかまど

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北極星

道北各界で活躍する皆さんによるエッセーコーナーです。 2020年3月までの記事はこちら


嶋崎暁啓(豊富町・自然ガイド)*身近な場所こそ宝物

 「えっ! こんな場所に、こんなにすてきなところがあったなんて!!」。JR宗谷線幌延駅から車でわずか1分のところに、その湖はある。元々は天塩川の一部だった旧河川の三日月湖は、周囲をミズナラやシラカンバなどの森に囲まれ、近くに行くまでその姿を見ることはできない。

 細くて狭い砂利道を車で進むと、視界が開け、青い空と白い雲を水面に映した美しい三日月湖が目の前に現れる。その劇的な変化は、トンネルを抜けて別世界にいざなわれた映画のワンシーンのようだ。

 今年スタートしたこの場所でのカヤックツアーでは、主に観光客が中心だが、時には地元の方も参加し、冒頭のようなうれしい反応がある。長さ3・5キロの三日月湖は、今でも一部が天塩川の本流とつながっている。奥の方まで進むと天塩川の中流域のような雰囲気で、オジロワシやカワセミに出合えることもある。

 宗谷の魅力は、あまり観光地化されていないことだと思っている。その魅力を伝えていければ、価値を理解してもらえると考えている。新型コロナ禍が落ち着き、有名観光地はどこも人であふれかえっている。そんな時、雄大な自然の中で誰にも会わずにのんびり過ごせる場所は本当に貴重だ。地域の宝物である三日月湖。これからも大切に素晴らしさを伝えていきたい。
 
(2023年8月21日掲載)

 

※掲載情報は、取材当時のものです。閲覧時点で情報が異なる場合がありますので、予めご了承ください。


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