北海道新聞 旭川支社 + ななかまど

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旭山動物園わくわく日記

全国的な人気を呼ぶ旭川市旭山動物園の話題やイベント、裏話などを紹介します。 旭山動物園ガイドとしてもお楽しみいただけます。 2020年3月までの記事はこちら


タンチョウのコウセイ*きれい好き ちょっぴり臆病

 「赤いのは毛ではなく皮膚です」。タンチョウの頭が赤い理由を来園者から聞かれると、こう答えています。皮膚の血液が透けて見え、興奮すると赤い部分が広がります。ツルに属するタンチョウを漢字で書くと「丹頂」、「丹」は赤い色、「頂」は頭のてっぺんという意味。日本では最大級の鳥で、翼を広げると2メートル40センチもあります。

 旭山動物園では昨年3月、釧路市動物園から来た雄「コウセイ」を飼育しています。同6月に雌「ノモ子」が亡くなりましたが、まだまだ元気です。雑食性で、特に魚が大好物。ホッケ、ワカサギ、シシャモ、オキアミ、トウモロコシなどを与えています。自ら昆虫類をついばみ、時にはねずみまで食べることも。冬は氷も口にします。

 プールの水を入れ替えると、ここぞとばかりに水浴びをして羽毛をきれいにします。本来なら「縄張り」があるため、餌を持って行くと威嚇されると思いきや、コウセイはフェンス越しに逃げ回ります。実は、コウセイは野生個体。2017年、釧路管内標茶町で他のタンチョウとけんかをして左の羽翼を半分骨折した状態で保護されました。命は助かりましたが、空を飛ぶことはほぼ出来ません。

 タンチョウは国の特別天然記念物です。一時は絶滅したといわれ、上川管内で見つかると新聞記事になるほど。釧路湿原を中心とした道東の生息域から近年、北海道全域に広がりを見せ、保護される個体も増えました。電線にぶつかる事故をはじめ、車や列車に衝突する交通事故や、牛ふんを溜める施設に落ちてしまうスラリー転落事故、シカ除けのフェンスやネットに絡まる事故などがあります。

 一方でタンチョウによる農業被害も起きています。タンチョウは現在、約1900羽いるようです。冬の給餌に頼らず、子育てが安心して出来る湿地帯を守り、人がタンチョウの暮らす環境を整えて理解してあげることが必要なのです。野生で保護されたコウセイの姿を見て、タンチョウと人との関わりについて考えてみませんか。(ちんぱんじー館担当 高井正彦)
 
【写真説明】保護されたタンチョウのコウセイ=4月19日 
(2023年5月8日掲載)

 

※掲載情報は、取材当時のものです。閲覧時点で情報が異なる場合がありますので、予めご了承ください。


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