北海道新聞 旭川支社 + ななかまど

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どうほく談話室


相沢食料百貨店・常務取締役 福間加奈さん(40)

創業100年 稚内市民の台所支える*地元と取引 共に豊かに

 【稚内】「相沢さん」と市民に親しまれるスーパー「相沢食料百貨店」は今年、創業100周年を迎えた。戦後の混乱、高度成長期、高齢化・人口減、インターネット販売の普及―。それぞれの時代に合わせ、JR稚内駅前で市民生活を支えてきたスーパーの経営について福間加奈常務(40)に聞いた。
(聞き手・高橋広椰)

――全国各地の逸品を販売するなどユニークな売り場づくりを進めていますね。

 「交流サイト(SNS)で流行した人気商品をすぐに取り寄せ、店頭に並べるなど、独自色を打ち出しています。特に、日々の食事は将来の健康に直結します。無添加の調味料など『食の安全・安心』を重視した商品には力を入れています」

――稚内にも大型商業施設が進出しています。

 「東京での会社勤めを辞め、稚内に戻って実家のスーパー経営に関わり始めた2009年、店を取り巻く環境が以前とは大きく変わったと感じました。その4年前、市内に大型商業施設がオープンし、中心市街地の店は次々と閉店、シャッター通りになってしまいました。うちの店も売り上げが大幅に落ちました」

――起死回生の一手は見つかりましたか。

 「全国の人気スーパーを視察しました。割高でも確かな品質の商品や、そこでしか買えないものを販売している店は地域住民に支持され、安定した経営をしていることが分かりました。それが私たちの原点です」

――「地元経済をまわそう」が経営のテーマですね。

 「人気商品を販売しても、地場産でなければ、この地域が恩恵を受けることはほとんどありません。地域密着型スーパーは地場の事業者と一緒に商品開発し、店頭や自社のサイトで販売することが大切だと思います。地元の生産者や製造業者と積極的に取引し、一緒に豊かになる仕組みを作っていきたいと思います」

――飲食店ともコラボレーションしています。

 「新型コロナウイルス感染症が広がり始めた時期に、疲弊した地域経済を応援するため、ハンバーガーなど、地域の飲食店お勧めの商品を集め、販売しました。非常に好評だったこともあり、この取り組みは続けています」

――店を取り巻く環境は年々厳しくなっています。

 「スーパーも他の業界と同様に大きな変革期を迎えました。人口減に加え、インターネット販売が普及し、ワンクリックで買える手軽さを超えるサービスが求められます。料理教室など、相沢らしい手作り感のあるイベントで、地域との接点を広げています。この店で買い物をしたい、働きたいと思ってもらえる店づくりを進めたいですね」

 
*取材後記
 スーパーなどの小売業はネット販売の普及で競争が激化している。相沢食料百貨店はどんな手を打つのか。ライフスタイルの変化に合わせ、人気総菜を冷凍して販売したり、稚内産の魚介類を自社で急速冷凍し、加工品として店頭に並べたりする計画があるという。「ライバルは他店ではなく、スマホです」という言葉が印象深かった。店がどのように変化するのか、今後が楽しみだ。
 
 ふくま・かな 1982年、稚内生まれ。札幌の高校卒業後、東京のアパレル会社に勤務。家業である相沢食料百貨店を立て直すため2009年、稚内に戻った。12年から常務として店を切り盛りする。父は同百貨店社長の相沢誠吾さん。

(2022年9月19日掲載)

 

※掲載情報は、取材当時のものです。閲覧時点で情報が異なる場合がありますので、予めご了承ください。


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