北海道新聞 旭川支社 + ななかまど

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旭山動物園わくわく日記

全国的な人気を呼ぶ旭川市旭山動物園の話題やイベント、裏話などを紹介します。 旭山動物園ガイドとしてもお楽しみいただけます。 2020年3月までの記事はこちら


キリンの出産*1時間で起立 生命力に感動


 
 キリンの結が昨年12月28日、オスの子を出産しました。旭山動物園にいる動物の中で、妊娠期間が一番長いのがキリンで、平均460日くらい(今回は454日でした)。その次はカバの240日なので、ものすごく長いことが分かると思います。
 結とゲンキが交尾したのは2019年10月3日。昨年春ごろまでは結の体に大きな変化は無かったのですが、夏ごろからおなかがだんだん大きくなってきました。9月ごろには胎動といって、おなかの中で赤ちゃんがムニュムニュ動くのが、外からでも分かるようになりました。
 その後、おなかはどんどん大きくなって、歩く時もゆさゆさ揺らすようになり、後ろ脚がおなかに押され、がに股になっていきました。この頃になると、お客さんからも「おなか大きいね」「妊娠してるの?」と聞かれることが多くなりました。
 そして11月にはおっぱいが徐々に大きくなり、出産が近いことを実感しました。待ちに待った出産は12月28日の夕方に始まりました。落ち着きなく寝室をウロウロ歩くうち、結のお尻のあたりから、水風船のような袋がプクッと出てきました。羊膜といって、赤ちゃんが入った袋です。結が後ろ脚を開き、いきむと、袋が出てきます。そしてバシャッという音とともに、赤ちゃんが床に落ちました。
 赤ちゃんはピクリとも動かないので心配になりましたが、結がペロペロと赤ちゃんの体をなめると、少しずつ動きだしました。そして震える脚で立ち上がり、何度も転びながら歩けるようになりました。出産から立ち上がるまで、たった1時間。赤ちゃんの生きる力と結の母性を目の当たりにし、言葉にはできない感情がこみ上げました。
 赤ちゃんは背の高さが175センチもありました。飼育担当より大きな赤ちゃんというのは、キリンならではです。赤ちゃんは毎日、結のおっぱいを飲み、最近はおとなと同じ乾草や葉も食べ始めています。早く春になり、屋外の広い放飼場で走り回る姿を、たくさんの方にご覧いただきたいと思っています。
(獣医師・キリン担当 佐藤伸高)
 
(2021年3月7日掲載)

 

※掲載情報は、取材当時のものです。閲覧時点で情報が異なる場合がありますので、予めご了承ください。


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