北海道新聞 旭川支社 + ななかまど

北海道新聞 旭川支社 + ななかまど

北極星

道北各界で活躍する皆さんによるエッセーコーナーです。 2020年3月までの記事はこちら


奥野真人(焼尻・ゲストハウス経営)*発達障害の診断を受けて

 昨年末、注意欠如・多動性障害の診断を受けた。いわゆるADHD、発達障害の一種だ。健常者のつもりで過ごしてきて34年、この年齢で「障害」が発覚したことにはかなり戸惑った。
 とは言え、今までの生い立ちの中で心当たりがあったから心療内科へ行ったのも事実。「すぐ物を忘れる、なくす」とか「無自覚に余計な動きをする」など、枚挙にいとまがない。こんな僕を笑って許してくれる人も多いが、中には不快に思う人もいた。心苦しい。誰も簡単にできることが僕には難しかったりする。
 目下の課題はこの障害とどう向き合って生きていくかだ。至極当然だが、宿の仕事も島での生活も人と関わることで成り立つ。兼業の漁業にしても、注意欠如のままでは致命的だ。
 だが、実はADHDも悪いことばかりでなく、注意散漫は好奇心旺盛、多動性は行動力、衝動性は突破力…と、人よりたけた性質の裏返しとも言えるらしい。島に移住し、宿を起業したことが当てはまるだろう。ささやかな自信だ。
 診断に加え、新型コロナウイルスの流行も手伝ってか、最近は本当に生き方、働き方について考えるようになった。僕にとって大きな壁となって現れたコロナとADHD。去年までと同じように過ごすようではダメだろう。今年は新たな方向性が定まる1年になりそうだ。
(2021年3月1日掲載)

 

※掲載情報は、取材当時のものです。閲覧時点で情報が異なる場合がありますので、予めご了承ください。


GO TOP