北海道新聞 旭川支社 + ななかまど

北海道新聞 旭川支社 + ななかまど

サラリーマンのつぶやき

サラリーマンが、ぼそっとつぶやきます。


サラリーマンのつぶやき 33言目

北海道もやっと夏らしくなってきました。
道内外で災害が発生しているのを報道で知り、辛い気持ちになります。
ただ、子供たちにとっては楽しい夏休み。
家族で思い出づくりに各地に出かけてもらえればと願っています。

 

私にも今でも忘れられない、苦しい夏の思い出があります。
子供のころ、夏休みになるといとこの家に毎年遊びに行っていました。
いとこの家には3人のとても仲の良い兄妹がいて、彼らと遊ぶのが大好きでした。
特に末っ子の女の子は私にとても懐いていて、私も彼女をとてもかわいがっていました。
花火をしたり、地元の夏祭りに行ったり、昆虫を捕ったりと本当に楽しい日々を過ごしていました。
私が小学5年生の夏休みのときです。女の子は当時3歳。
いつもの通り、いとこの家に遊びに行きました。

 

ある日、叔父が近所の川に連れて行ってくれました。
泳いだり、魚釣りをしたり、川の水でキンキンに冷やしたスイカを食べたりと、
これぞ夏休みの過ごし方を堪能していました。
突然、その女の子の悲鳴が聞こえてきました。
お気に入りだった真っ赤なサンダルの片方が川に流されていました。
叔父は必死に取ろうと川に入って手を伸ばしたのですが、
川の流れが急で、中腹まで流れ、手元に戻せませんでした。
大粒の涙を流す彼女の横で、私は茫然と赤いサンダルを眺めていました。
何故かすごく強烈なイメージが頭の中に焼き付きました。

 

その年の冬、私が家で留守番をしていると、叔父から緊迫した連絡がありました。
彼女が急病になり意識不明になっているから、母が帰ってきたらすぐ連絡をくれるようにと。
子供の私にも何が起きたのか、理解できました。
それから一か月後、彼女は亡くなりました。
葬儀では家族と親族全員が泣き崩れ、
人生で身近な人が亡くなったのが初めてだった私にとって、それはとても苦しい時間でした。
火葬場で彼女の遺体が焼かれ、煙突から昇る白い煙を見上げながら、
あの夏の川に流されていった赤いサンダルが頭の中で思い出していました。
40年以上たった今でも忘れることができません。

 

※掲載情報は、取材当時のものです。閲覧時点で情報が異なる場合がありますので、予めご了承ください。


GO TOP