北海道新聞 旭川支社 + ななかまど

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どうほく談話室


天塩町で「おのっぷ農園」経営 吉田哲弘さん(64)

日大芸術学部生ら短期雇用*夢追う若者との交流 刺激に

 天塩町中心部から20キロほど離れた雄信内地区にぽつんとある「おのっぷ農園」。経営する吉田哲弘さん(64)は、20年ほど前から東京の大学生らをアルバイトに受け入れてきた。延べ人数は約千人。中でも日本大芸術学部の学生は先輩から後輩に受け継がれる形で訪れており、プロの写真家や俳優、映像監督になった人もいる。若者との交流で得たものを聞いた。

 

 ―東京の大学生らをアルバイトに受け入れたきっかけは何ですか。
 「旧天塩町農協がアルバイトを募集した時期があり、明治大の学生を引き受けたのが最初でした。昔のアルバイトは重労働で逃げ出す子もいた。それでこちらは1日6時間労働にして『きょうは何やる?』なんて緩い感じで働いてもらうことにしました。今は勤務時間も自由。合間に自分の仕事をしてもいいことにしました。今は一年中、誰かが来ています」

 

 ―どんな仕事をしてもらっていますか。
 「キクイモの収穫作業などを手伝ってもらっています。キクイモは血糖値の上昇を抑える働きがあり、健康にいいそうです。サラダや天ぷらなどにして食べられますが、あまり売れなかったので、今は焙煎(ばいせん)してキクイモ茶として販売しています。東京や横浜にも出荷し、通信販売もしています」

 

 ―これまでどんな人たちが訪れましたか。
 「東大や早稲田大、米国留学中のシンガポールの大学生などさまざまです。『ただ旅行するだけじゃつまらない』という会社員や大阪府警を定年退職した人も。天塩町で知り合って結婚した夫婦もいます」

 

 ―日大芸術学部など、滞在中、ここで創作活動をしている学生もいますね。
 「写真や映像を撮ったり、文章を書いたりして発表しています。滞在した人の中にはプロになった人もいます。写真家の野口花梨さん、俳優で映画監督の東盛あいかさん、俳優でミュージシャンの小川未祐さん、俳優の萩原護さん、瀬戸璃子さん、和田紗也加さん、映像監督のフジムラヒヨリさんなど。みんな夢を持っていて元気をもらいます」

 

 ―刺激になったことはありますか。
 「新しい音楽や映画など、田舎の独り暮らしで知らなかったことが情報として入ってくる。通販サイトを作ってもらい、都会の店も紹介してもらいました。天塩町としても、マチを気に入って宣伝してくれる人たちと結びつきを強めていってほしいですね」(聞き手・塩野洋)

 

*取材後記

 家の壁には色紙や写真、映画のチラシなどがメッセージとともにたくさん飾られていた。どれも「おのっぷ農園」で働いた若者たちが残したものだ。何度かここで数人の若者とお会いしたが、吉田さんが「テツさん」と呼ばれ、慕われていたのが印象的だった。道北の小さな農園が芸術や文化の発信地になったらどんなにすてきだろう。そんな思いを巡らせた。

 

よしだ・てつひろ 1961年、天塩町出身。旧啓徳中、旭川工業高卒業。札幌の専門学校卒業後、印刷会社で働き、27歳で家業の畜産業を継いだ。現在は畜産流通業を営み、牛の買い付けの仲買人を行う傍ら、キクイモ栽培を手掛けている。

(2026年08月03日掲載)

 

※掲載情報は、取材当時のものです。閲覧時点で情報が異なる場合がありますので、予めご了承ください。


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