北海道新聞 旭川支社 + ななかまど

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どうほく談話室


体験型観光を手掛けるツアー会社代表 鳥羽晃一さん(53)

動画など使い訪日客との会話工夫*自然の危険性も伝えたい

 【東川】長期滞在してアウトドアなどを楽しむ体験型観光「アドベンチャートラベル(AT)」。道などが普及を目指す新しい観光のスタイルだが、普及には質の高いガイドの存在が欠かせないという。町内のツアー会社「ガイドオフィス風」代表で山岳ガイドの鳥羽晃一さん(53)に、ATガイドの役割や道北観光の課題について聞いた。
 
――ATと従来の観光の違いは。
 「短期間で観光地を回るパッケージ型の旅行とは異なり、じっくり時間をかけて地域の自然や異文化体験、アクティビティなどを楽しみます。利用客で多いのは、欧米やオーストラリアの人たち。シンガポールやインドネシアといったアジアの富裕層も増えていると感じています」

――道北ではどのようなAT観光が人気ですか。
 「夏は登山やバードウオッチング、離島に行くこともあります。これからの季節は、乾いた雪(パウダースノー)を求めて世界各国から旅行客がやってきます。欧米の人にとって日本は『極東』。見たことのない自然や文化がある。昆布漁や農作物といった身近な話をしただけでも興味を持ってくれますね」

――AT普及のため、プロのガイドを増やすことが課題となっています。
 「英語を話すガイドが少ない。私も英語は苦手ですが、受け身にならず自分からコミュニケーションを取っています。アウトドアに関する必要な知識を伝える際は動画を見せるなどの工夫もしている。コミュニケーションを取ろうとする『ハート』があれば良いだけです。また、私の所属する合同会社『アドベンチャー北海道』では、通訳とガイドをペアにしてツアーを提供しています。より良質な旅が提供できるという手応えを感じています」

――山岳ガイドとして旭岳(2291メートル)や黒岳(1984メートル)を案内することが多いと思います。
 「難しいのは、道北の天候が分からない旅行者に、必要な装備や危険性について伝えることです。日本の山は急峻(きゅうしゅん)で標高が少し高くなれば一気に環境が変わります。今秋は不安定な天気が多く、軽装で山頂へ向かう人を何度も止めました。ただ、強制力はないので注意喚起くらいにしかならず、遭難してしまう人も多くいました」

――ATの普及は地域に何をもたらすのでしょうか。
 「ただ『自然が美しい』という観光だけではなく、その地域の歴史や現状を知り、未来へ維持していく大切さを考える人が増えると思います。悪天候でも『これが北海道の自然ですよね』と受け入れ、危険を冒さずに楽しむAT観光客もいます。そのように理解のある旅行者が増えれば良いなと思います」(聞き手・大井咲乃、写真・諸橋弘平)
 
*取材後記
 「自然という大きなものに僕らみたいなちっぽけな人間という存在がかなうわけないですよね」と優しいまなざしで話す鳥羽さんの姿が印象的だった。ATを広げていくことは、その地域がもつ自然や文化といった財産を再認識することにもつながるだろう。ガイドとしてではなくてもATに関心を寄せる人が増えることに期待したい。
 
 とば・こういち 1970年、千葉県成田市(旧大栄町)生まれ。立正大探検部に所属し、南アルプスなど山岳縦走に夢中になる。96年に札幌へ移住し、自然体験学習などを行うNPO法人ねおす(札幌)でガイドを務め、2005年に東川町へ移住。10年に「ガイドオフィス風」を設立。

(2023年11月20日掲載)

 

※掲載情報は、取材当時のものです。閲覧時点で情報が異なる場合がありますので、予めご了承ください。


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