北海道新聞 旭川支社 + ななかまど

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北極星

道北各界で活躍する皆さんによるエッセーコーナーです。 2020年3月までの記事はこちら


谷龍嗣(留萌・僧侶)*時を超えた部活ノート

 私が住む寺に1冊のノートがあります。持ち主は、かつて留萌高吹奏楽部の顧問を務めた黒田佳宏先生と部員たち。部員一人一人と向き合い、思いを重ねる「部活ノート」は、師と慕う旭川明成高吹奏楽部の顧問、佐藤淳先生に教えてもらったといいます。

 毎日毎日、部員たちが書き込む疑問や気づきに赤ペンを入れ、彼らの成長につなげていました。しかし、7年前の4月30日を最後に先生がそのノートにペンを入れることはなくなりました。41歳の若さで急逝。ノートは寺にご遺骨と共に安置されています。

 今年、先生のお参りにきた当時の部員がいました。「部活ノートを見てみるかい?」と投げかけると、その部員は「はい」と答えました。ノートには、先生の葬式の翌日から再開された部員たちの言葉がびっしり書かれていました。

 その一言一言をかみしめるように読むかつての部員。「みんな、悲しかった。でも、このノートは続けていました。ノートは先生とみんなの気持ちをつないでいました」と語りました。

 「明日はないと思って生きなさい」。黒田先生がいつも話していた言葉といいます。いま、ここで、自分を大切に生きる―。ノートは、私たちの言葉と行動が次代をつくり上げていることを教えてくれました。 
 
(2023年10月16日掲載)
 

 

※掲載情報は、取材当時のものです。閲覧時点で情報が異なる場合がありますので、予めご了承ください。


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