北海道新聞 旭川支社 + ななかまど

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どうほく談話室


旭川市最高デジタル責任者 森本登志男さん(60)

行政のデジタル化推進*最終的に「来なくていい窓口」を

 旭川市の最高デジタル責任者(CDO)を昨春から務める森本登志男さん(60)。今津寛介市長の公約として就任し、デジタル技術を活用して行政事務効率化や市民サービス向上などを図るデジタルトランスフォーメーション(DX)の推進を統括している。DX化に向けた実際の取り組みや今後の展開を聞いた。(聞き手・旭川報道部 佐藤愛未、写真・西野正史)
 
――民間企業から行政組織に移ったのですか。

 「外資系IT企業マイクロソフト(現日本マイクロソフト)から2011年、地方自治体に移りました。最初は佐賀県の最高情報統括監(CIO)への就任でした。県庁の全職員約4千人を対象にテレワークを導入するなどDX推進や地域振興で成果を上げました」

――地方自治体のDX化はどうして必要なのですか。

 「地方には『デジタル化の遅れ』『マーケティング的思考の欠如』という課題があります。特に行政はデジタル化が遅れています。例えば、市民は複数の書類に何度も同じ住所や名前を書かされます。営業時間外も受け付けができるインターネットの時代に開庁、閉庁の時間があるなど、住民目線でみると、まだまだ改善の余地があります。また人口減少に伴い労働力も減るから、1人当たりの市職員の仕事の効率も上げないと。システム自体を変えないといけません」

――旭川市でDXを推進する意義を教えてください。

 「北海道は面積が広く人口密度が低い地域です。自治体もサービスを提供するのが大変な環境です。中でも人口32万人の旭川は道北の中心。旭川が周りの市町村の手本になる必要があります。上川、宗谷管内の自治体職員からも旭川に対する期待は大きいのです」

――これまでの活動内容について教えてください。

 「月2回、計10日間ほど旭川に来て市職員らから業務の改善に関する相談を受けています。件数は11月までに116件。相談により実現したものもあります。昨年10月に市中心部に開設した子育て世代包括支援センター『waka・ba(わかば)』では乳幼児健診や申請の一部ができるようになりました。一方、子育て支援に関わる市の部署は第2庁舎で遠くなった。親が何度も往復しないで済むように双方をオンラインの会議システムでつなぎ、子育て相談や書類確認などをできるようにしました」

――市役所の新総合庁舎が11月に開庁します。

 「旭川市では転入・転出・転居の異動届をホームページで事前申請することで、氏名や住所を記入しなくていい『書かない窓口』が始まっています。新庁舎ではこれをさまざまな窓口で活用したい。スマートフォンなどを活用し、空いている窓口の案内をしたり、手続きが複数の課にまたがっているのに利用者が把握していない場合も『この課も該当していませんか?』と自動で提案したりできたらと考えています。最終的には『来なくてもいい窓口』をつくりたいですね」
  

*取材後記
 DX推進によりペーパーレスを目指すのかと尋ねたところ、「デジタル化の結果がペーパーレス。一つの工程として考える」と教えてくれた。テレワークも結果として使われるかどうかであり、「いつでもできる体制づくりが大切だ」と説く。「デジタル化の先を考えないといけない」という言葉にはっとした。森本さんのDXに対する考え方は、どこか人生に通じるものがあるのかもしれない。
 
 もりもと・としお 1962年、岡山県生まれ。京都大卒。日本マイクロソフトを経て佐賀県最高情報統括監(CIO)、岡山県特命参与(情報発信担当)を歴任。2017年にデジタル技術導入を進める「キャリアシフト」(東京)を設立、同社代表取締役。
 
(2023年1月16日掲載)
 

 

※掲載情報は、取材当時のものです。閲覧時点で情報が異なる場合がありますので、予めご了承ください。


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